熱い身体に 奥底まで溶かされる
風の音などもう、聞こえない
其の参
蝋燭の灯りがともる和室で。
布団に放り出されたサンジと、圧し掛かるゾロの間で無言の攻防が続く。
深夜だが大きな声をだせば誰かが気付いて助けに来るかもしれない。
が、男に押し倒されているこんな姿を人に見られるのは我慢ならない。
自分ひとりでこの坊主をなんとかできる、つもりだった。
このときまでは。
サンジが脚を振り上げたところを掴まれ、暴れる両手を頭の上で腰紐によって括られ、動けないようにしてから、ゾロは足の間に割り入ってきた。
サンジは息を荒げながらも、ぎりりときつく睨み上げる。
先程まで、こんなイカレた男を『良い奴だ』と信じきっていた自分が憎らしい。
坊主はそんなサンジの視線など物ともせず、ニヤッと笑うと、着物を開き胸の上に舌を落とした。
その意図が掴めないまま、ひちゃりと濡れた感触がするのに、サンジは目を見開く。
「うぅっん!・・ふ・・ぅっん―――――!!??」
(嘘っ!こいつ、俺の乳舐めてやがるっ!)
ぐぁぁっと羞恥に血が上る。
あ、ありえねぇ!
本気でおれのこと犯す気かこいつ!
男だぞ!てめぇ腐っても僧侶だろうが!
・・・どうやって!?
焦って跳ね起きようとしたが、身体を押さえつけられ、がり、と乳首に歯を立てられ。
「んあぁあっ!」
「じっとしてろよ。噛み千切るぞ」
その言葉を聞いた瞬間に感じたのは、
餓えた獣に睨まれたような恐怖に似て
それよりも
頭の芯がぶれるような、
目の前が赤く染まるほどの、
快感。
ぐたりとサンジの身体から力が抜けた。
「ぅあ・・あ、あ、ふぅ」
べちゃべちゃと、耳に濡れた音が届く。
乳首を執拗に舐めしゃぶられ、痺れを伴って痙攣する。
はっきりとした快感を得ながら、サンジは最後の抵抗を示すように身を捩るが、縛られた腕が邪魔して。
それが逆に、男の舌に胸を押し付ける形になった。
「なんだ・・・強請ってんのか。ンな好いのか」
「ちげ・・・ぅあ、あ」
そこをきつく吸い上げられ低い声で囁かれ、サンジは漏れる声を堪えるために ぐっと息を詰めた。
「ぅ、・・・っぐ・うん・・」
身体が震えるのが、恐怖のせいばかりではないことは、充分知っている。
火傷しそうなほど熱い手が。
ゾロに施される愛撫が。
肌に感じる全ての熱が。
サンジの身体をぐなぐなに蕩かすのだ。
「・・めェ、しつけっぁ、も、ヤる・・なら、ぁア!っ・・とっとと、犯りゃがれっ!」
こんなに何処も彼処も弄られて、正体を失くすほどに喘がされるよりは、無理矢理に犯されたほうがなんぼかマシだ。
感じすぎて泣き声の混じるサンジを、
「こんな旨そうな身体晒して、すぐに終わらせろってか。そいつぁ無理な相談だな」
ゾロは可笑しそうに揶揄する。膨れて真っ赤に色付いた両の乳首を玩びながら。
おかしい。
この坊主の手が、こんなに感じるなんて、絶対変だ。
自分が男に、こうまで簡単に身を許してしまえるものだったのかと、ぼろぼろと涙を流し、サンジは悔しさに歯噛みした。
「・・・ぁう、ぃあ・・やめっ・・」
節の太い指を捻じ込まれても、痛みすら感じぬ口先だけの抵抗は、意味を成さずただ男を煽るだけとなる。
「誰が止めるかよ、まだこっからじゃねぇか。・・・まぁせいぜい、楽しめ」
ゾロは、形の良い唇を歪め、心底楽しそうに笑った。
「あ・・うぁあ、ゾロ・・はいんね・・・っ」
「あ?んなことねぇだろこんだけ慣らしゃ。おら、飲み込んでんじゃねぇかよ」
「んぐぃ・・イ、あぁぁぁああっ」
根元までを一気に埋め込まれ涙ながらに喘ぐサンジを見下ろし、ゾロは満足げに息を吐く。
「口じゃ嫌だと言いながら、おめぇの此処は悦んでるぜ。旨そうに銜え込みやがって。とんだ淫乱だなぁ」
「あぁあッァあンっだ、まれ、変態っあぁああ」
いきなり律動を始められ、サンジは男を罵る。
熱い、焼けた鉄を体内に捻じ込まれたような錯覚に。
サンジは喉を逸らした。
露になった喉元に、ゾロが噛み付く。
「ひぁ!・・ってェ・・よ阿呆っ」
口の端からだらだらと垂れる涎をゾロが舐め取った。
そのまま舌を絡められ、サンジは必死で吸い付く。
「ぅんっ、んンン!ふァ・・っあぅ」
口内を激しく蹂躙され、胸の尖りを捏ねられ、
「アァァ、ゾ!ああぁあああぁあぁアア―――――――――!!!」
サンジの陰茎から飛沫が迸った。
全てが終わった後、ぐったりと意識を飛ばして眠るサンジには、
「相変わらず、口だけは達者だな。ま、他もちっとも変わってねぇが・・・」
小さく呟かれたゾロの科白は、聞こえなかった。
其の四へ