月が見ている

  【 4 】



 「次はてめぇの番だ」

そう言ったゾロの瞳は、月の光を受けて、妖しく赤くゆらめいていた。

その不思議な赤に目を奪われ、まるで催眠術にかかったように、サンジはゾロの腰に手を伸ばしながら起き上がった。



何のためらいもなく、その猛ったものを頬張る。

脈打つ鼓動が、口の粘膜を刺激する。

目を閉じて、その鼓動を体中に送りこむ。

この熱い鼓動と1つになってしまいたいと願った。

     まだ足りない・・・もっと、もっと・・・。

「・・・・・・っ 。熱ィな・・・・」

ゾロのつぶやきが、熱い吐息と共に頭上から降り注ぐ。

吐息を洩らす、ゾロの表情を見たいと思った。

オレにしゃぶられて、オレに欲情する、オレだけが見ることのできるその顔を。

     まだ足りない・・・もっと、もっと・・・。

お前のすべてで、オレを一杯に満たしてくれ。・・・ゾロ・・・。



「・・・ク・・・・」

ふいにゾロがテーブルに手を伸ばす。

その動きに合わせてサンジの口から飛び出したモノが、サンジの頬を軽く打って離れていった。

「あっ・・・・」 思わず声が漏れた。



「ン、、今・・・」

ゾロはアイスペールに手を突っ込み、両手に大ぶりの氷を掴んだ。

そして1つをサンジの口に。 

「つっ・・・ロろ・・!」

「出すんじゃねェぞ」

もう1つは手に握ったまま、空いた左手でサンジの首筋に触れ、肩まで撫で下ろしながら押し倒した。



「かっ・・はっ・・・!」

衝撃で、氷が溶けた水にむせ込む。口の中の氷が頬に張り付くようだ。冷たくて痛い。

氷を口の中で転がそうとした時

「ひぃっ、ゃッ・・・・」

乳首を掠める氷の感触。

溶けた水が脇の下へと流れてシーツを濡らす。

「ちょ・・・・っ・・」

冷たさで半開きのままの口の端からは、溶けて溢れた水がつぅ・・と流れ落ちる。

耳たぶから首筋も氷で撫でられ、思わず肩が浮く。

「ァ・・・や・・・・」

ゆっくりと、氷だけがサンジの体の上を滑って行く。

感覚が、ワカラナイ。ただとても冷たい。濡れた体がどんどん冷えていくのだけが分かる。

(ゾロ・・・お前の手がイイんだ・・・)

ゾロの存在を求めて頭を起こし、視線を定める。


降り注ぐ月の光。体の水滴が静かに輝いていた。

皮膚が泡立ち逆立つ産毛さえ、光っていた。

自分の体でないようだった。 とても美しいと、思った。

ゾロは・・・どう思うのだろう?



ふいに、光が遮られる。

目の前の、ゾロの2つの瞳に吸い寄せられた。

なんて目をしていやがる。まるで・・・

同時に、喉の奥から嗚咽にも似た思いが込み上げてきた。

こんな情けない思いは、この体ごとシーツに縫いとめて欲しいと・・・・そう願った時、



「冷やせよ・・・」

という声と共に、ゾロが肩にまたがり、口に熱い塊をねじ込んできた。

溶けた氷の最後のカケラが喉の奥に入り、激しくむせる。

しかしゾロは休息を許さなかった。

サンジの頭を左手で押さえ、右手に残った氷の塊と一緒に根元を掴んで、ひたすらサンジの奥に突きたてた。

ゾロの持つ氷は、凄まじい熱ですぐに溶け、サンジを濡らす。



もがくサンジの両手が、ようやくゾロの両手首を掴んだ。


動きが止まり、見つめ合う2人。



ゾロの口元が、不敵に吊り上った。

腰を引き、ゆっくりとサンジの上に四つん這いで覆いかぶさる。

視線を逸らした方が喰われる、さながらそれは肉食獣の闘いのようで。

サンジも濡れた口元で冷たく笑った。

ゆっくりと動く指が、互いを求めて、しっかりと絡み合った。


「熱くて熱くてたまらねェ。てめェにブチ込んで・・・・

「上等だ、クソ野郎。寒ィんだよ。しっかり温め・・・・


それが合図だった。

咆哮が聞こえてきそうなほど、狂おしく求め合い、すがって、抱き合った。

キスをしていないと、気が狂いそうだ。

擦り付け合う下半身から聞こえるいやらしい水音が、すべての音を支配した。

(ゾロ、ゾロ、ゾロ、ゾロ・・・・・・!)

体温が1つになり、溶け合って・・・・サンジの絶頂の叫びが、柔らかな月の光を切り裂いた。










     
執筆:リキン様







 
⇒5 最終話 ( 如月梨乃様 )