夜空に高く浮かぶ月

  日ごと夜ごとに色を変え 形を変えるその様は

  大きく  明るく  暖かく

  暗く  冷たく  美しい





  月が見ている

  
【 2 】



 金色の髪が、月の光を浴びて輝く。
 そこだけが切り取られた空間のようで、まるで一枚の絵のようだと
 その姿が、血に汚れた自分には ひどく遠く思えて

 触れるのを一瞬 躊躇った。


 虚空へ伸ばした手を、サンジが怪訝そうに眺め声を掛ける。

 「ん、酒か? ンな焦んなくても、おれひとりで飲んだぐれぇじゃなくならねェよ」

 ふ、と微笑を浮かべて薄いグラスに酒を注ぐサンジの腕を 絡めとり引き寄せ

 「!!っぶね、こぼすとこだっ・・!・・・っう」
 驚いてわめく口を、己の唇で塞いだ。

 「ん・・・んぅ、・・・・ふ・」
 引き結ばれた唇を舌で開き、口内をくまなく舐める。
 きつめの酒の残り香がゾロの鼻腔をくすぐった。

 「うめぇな、この酒」
 「・・・・ンッ、酒、かよ・・」
 照れたように呟くサンジの頬に唇を落とし
 「あぁ、おめぇも美味いな。じっくり味わわせろよ」
 まだ 夜は長いぜ。

 そう囁いて柔らかな髪を撫ぜ、空いた手でシャツを引き抜いたあたりで、
 サンジの体からするりと力が抜けた。






 (やっぱ、さっきの街でなんか買っときゃよかったか・・・)

 他人の誕生日に、プレゼントを贈ったことなどない。
 それにもとより、サンジの欲しい物が判らなかった。
 いつも、誰よりも近くで見ていたはずの男の、欲しがっている物。
 人に『与える』ことが生き甲斐のようなこのコックが、自らなにかを望むことなどあるのだろうか。




 おまえの好きなものってなぁ、なんだ



 おまえは・・・何を望む


 サンジ・・・・・・


 俺は、おまえに、何を与えられる




 胸元を開き、唇を押し付けながらゆっくりとベッドに横たわらせた体。
 舌を這わせた白い肌から甘い香りがたちこめる。
 黒いシャツと肌の色の対比に。薄明かりの中、目がくらむ。
 触れた柔らかな肌の感触に、
 甘い声をあげる恋人に
 ゾロは夢中になった。





  ******     ******




 「・・・うぁ、あ、う・・・ふぅぅ・・ゾロっ・・」
 ぬるついた感触にサンジは掠れた声をあげる。

 施される愛撫のひとつひとつに、身をくねらせながらも、
 (やべぇこのまま流されてたまっか)と息を吸い込んだ。

 「は、あっぅ。ゾ・・・当たったら、褒美だっつったろ・・・おれの欲しいもんっぁ、判っ・・たのかよっ」

 「あ?あぁ、もうちょい・・・」

 「おめ、もっ考える気・・ね、っだろ」

 「うるせェ、とりあえず、一回やらせろ」

 「・・・はぁ?!お・・・おまえ、最低だなぁ」

 ゾロの傍若無人な言い方に、怒るより先に呆れてしまう。
 うっかり笑いがこみ上げてきたところで、胸の尖りをガリリと噛まれた。

 「ひ、いぁ!」

 「今日はおまえの誕生日だろ。おとなしくしてりゃいい」

 「・・・ハ・・・ 言われねぇでも。」





 触れてくる男の熱い手に、蕩けるような快感を得ながら



 なぁ、足りねぇよ。

 ゾロ・・・・・・。



 乾いた心を癒すものを望み続ける。



 熱い手と

 舌と

 心に


 いっそこの体ごと


 交わって 溶かされて ひとつになってしまいたい




 おれの、欲しい物




 気高く 強き  おれだけの 















     
執筆:雪城 さくら






 
⇒3 ( さかぷぅ。様 )