2007サン誕リレー小説


 月が見ている


 【 1 】






 新しい船の新しいキッチンではなく
 新島と言う、のどかな島のホテルの一室にサンジはいた


 (もう、0時まわったな
 誕生日か・・・)

 サンジは、クルーの誕生日には
 主役の好物を、でも栄養バランスはキチンと考えられたメニューを考える
 みんなが、楽しそうに騒いでるのを見るのがたまらなく好きなのだ

 だが、それが自分自身の誕生日となると・・・
 照れると言うか、むずがゆいと言うか
 どうか、みんなが思い出しませんように!
 などと、思ってしまうのだった

 そして、それは今年も同じだった


 のだが・・・

 それは、二日前突然言い渡された

 「ちょっと寄り道するから」
 「え?」
 「サンジくん誕生日でしょ?年中無休なんだから、自分の誕生日くらい休んでよ」

 まあ、あながちはずれでもないのだ
 サンジの誕生日の料理だって、結局はサンジが作っているのだから

 そして・・・まるで追い出されるように・・・
 送り出されたのだった・・・ゾロと一緒に

 (なんで、ナミさんゾロと俺を一緒に・・・もしかして、バレてるとか!!??そんな事があっちゃいけねえ・・・)

 グラスが空になったのと同時に
 バスルームの扉が開いて
 胸に袈裟懸けの傷のある男が出てきた

 「0時過ぎたな・・・」
 「別に何も起きねえぜ」
 「なんか欲しいもんとか、ねえのかよ」

 (は?それって、誕生日プレゼントってやつか?びっくりだ。なんだか、調子狂うな・・・でも、欲しいものは、あんだよな)

 「あるっちゃ、あるが」
 「なんだよ」
 「言わねえ、当たったら褒美をくれてやるぜ」
 サンジはにやりと笑って、グラスを一気に開けた

 グラスの中で、氷がくるりと回った

 「何飲んでんだ?」
 「この島の酒だよ、米酒」
 「俺にも飲ませろ」

 ゾロは、ベッドに腰掛け飲んでいたサンジの脇に寝転がった
 すぐ傍に、大きな窓があり丸い月を見ることが出来る

 (アイツの欲しい物・・・)
 月を見ながら考えていた

 サンジがじっと見つめているのも気付かずに









     
執筆:如月 梨乃様






 
⇒2 ( 雪城さくら )