優しくしてね?

  【 4 】



『また、オモチャ使って、セックスして。』

恥ずかしくて、申し訳なくて、どうしても躊躇ってしまっていた、そのオネガイを、

サンジが言おうが言うまいが。

どっちにしろ、『イタズラ』されることに変わりはなかった。



何度も勃起したり萎えたりの繰り返しはそろそろ可哀想だから、というワケの分からない―――なんとなく納得したくない理由で、
『してほしいコト』をお願いさせられる間も、ずっと性器を弄られ続けた。
あえぎに途切れる言葉を、何度も聞き返されて、
くちゅくちゅ滴る先走りの水音も、耳穴をねぶるゾロの唾液の音にかき消されて。
自分の発する声も聞こえないまま、何も考えられず、恥ずかしいことをたくさんたくさん言わされて、
隠したかった願いも、ぜんぶ暴かれて。

約束通り、怒りはしなかったゾロだけど、呆れられてはいるんじゃないかと不安を感じる。
やらしくてごめん、って涙まじりに謝ったら、
「そんなもん、俺も同じだろ」って優しく言いながら、ゾロはぎゅっと抱きしめてくれた。

「俺が、お前に、やらしいことしてぇし、させてぇし、可愛くあえぐエロいとこ見てーんだよ。だから、お前がそうなってんのは、俺のせいだろ。謝る必要なんかねえ」
優しくされると、泣きそうなぐらい嬉しくて、安心して。
それと同じくらい、言われる台詞が恥ずかしくて、くすぐったくて。
「謝るより、なァ、もっとやらしくなれよ・・・」
敏感すぎる耳元に、掠れた声を吹き込まれるから、ビクビクと震える体を抑えられない。



赤くぼやけた瞼に口づけながら、ゾロの手に握られた、作り物の性器―――サンジが自ら望み、乞うたその行為。
ゾロの手元に向かう視線。緊張に隠れて・・・しかし確かに存在する期待を。
読み取ってほしい、悟られたくない。
相反する気持ちだが、ゾロはおそらく、双方とも分かってしまうんだろう、と思った。

(・・・ごめんな。)
サンジは口に出さず、心の中で最後の謝罪を述べる。
過去、一度は拒否したくせに。
ゾロの以外をいれてほしい、なんて言えない、と確かに思っていたくせに。
もし、あの時ソレを選んでいたら、どんなことを―――されたんだろう、と思うと、あさましくカラダが疼く。
それを淫乱というなら、きっと自分はそうなんだろう。

でも、
それでいいと、ゾロが言ってくれるから。
不安になることはないんだと、諭してくれるから。
なんでもしてやる、と、甘やかしてくれるから。

いつも、ギリギリで我慢している、欲望の限界のその先へ
特別な日の 今日だけは。






「あ、ーーッン、ん、」
ゾロの手のひらに延ばされ体温に馴染んだ潤滑油を、大量にソコへ垂らされる、どるりとべとついた感触に、サンジは思わず喉の奥から声を漏らした。
ベッドヘッドに繋がれて固定されていた金具は外されたものの、柔らかな手枷はまだ解放してもらえない。
それでも自由の利かない両手のまま、うつぶせにひっくり返されて、腰を上げ膝を割られ・・・
今、ゾロには、サンジの背中から、双丘も、奥まった部分まで、全て曝け出されていることだろう。
いつもなら、この体勢ですら恥ずかしくてたまらないのだが・・・これから、もっとスゴイことをされるのだ。
一番楽なのがこの格好だと、言われてしまえば文句を飲み込むしかなかった。

ローションを馴染ませ解すように動いていた、ぬめりを含んだ太い指が、ぐちゅり、とサンジの中へと飲み込まれる。
「―――っふ・・!」
散々いじられ、焦らされていたせいで、それだけで、
ガクんと膝の力が抜け、崩れそうになるサンジの腹の下に、ゾロが近くにあった枕を二つ重ねて積み上げてくれた。
「チカラ、抜いていいぞ」
ひどく敏感になっているサンジを気遣うかのような恋人の声音に、深く息を吐きながらこくこくと頷いて、体重をクッションに預ける。
腰を支えていた下肢から力が抜けるのを見計らったように、後腔に挿し入れた指を徐々に増やされ。
サンジは絶え間なく嬌声を上げながら、受け入れるための準備を施されるのを、自らの内を開かれる感触を、味わった。


腰の先、サンジの陰茎は蜜で濡れ、糸を引いて垂れるそれが枕を伝いシーツを濡らす。
身体が跳ねるたびに、両の手首を繋ぐ手錠の鎖が、カチャカチャと音を立てた。
「ゾロぉ・・・おれもっ・・・さわってたい・・」
触れられているのは内側に挿し込まれた複数の指と、尻たぶを割り開く手のひらだけで。
快感の涙を溜めて振り返る、視線が行き着くのは・・・
普段から、ちっとも触らせてもらえないゾロの砲身。
手を伸ばしても届かないそこは、赤黒く怒張して、引き締まった裸の腹に張りついている。
「・・・それは、また今度な」
サンジの目線に気付いたゾロが、少し眉を寄せながら笑った。
そしてまた、ぐぶりと指を根元まで埋め込まれる。ばらばらに三本、動かされて。ひっかくように、かき混ぜるように、抜き差しを繰り返されて。
「や、っぁう、っ、・・なん、でぇ・・?」
サンジは喘ぎとまじって泣き出しそうな声をあげる。

ゾロだって、さっきから萎えてないくせに。おれのうしろ弄りながら、勃起したまんまのくせに。
でも、いまから挿れるのは、ゾロじゃない、んだから、・・・きっと、つらい。ゾロも。

「さわりたいのにい・・・ぞろも、ちゃんときもち良くなってほしいのに・・っ」
だんだんと、呂律も怪しくなっていくサンジだが、こんな時でもイジワルされんのか、と思うと、悲しくなってしまう。
なのに
「俺も大概、興奮してッからな・・・そこまでされると、さすがに加減してやる自信ねェよ」
ゾクっと背筋に響く掠れた声で言われながら、後唇に圧し充てられる、硬いもの。
いつのまにかその手に握られた、ゾロじゃない、モノ。
「え、あ、っ、―――うぁああっ」
ゾロの大きさに慣れきった身体は、男性器を模ってはいるがゾロ自身より幾分細身なバイブを、苦も無く飲んでいく。ローションで解された甲斐もあってか。
割り開き侵入する熱のない無機物を、サンジの内部が吸い込むようにナカの奥へ。
「―――やべェ・・・」
後方から聞こえる、灼けて低く押し殺した声で、分かる。
ゾロが、興奮してる、といった言葉は真実で―――。

熱い吐息の混じるゾロの声音に、ブルッ と勝手に身体が震えた。眩暈しそうなほど感じた。
同時に、胸の奥から何かが抜け去るような、大きな安堵に包まれる。
どうしてそう感じたのかは分からないけれど・・・
なぜか、全身で、―――愛しているのだと、言われてる気がした。

どんなに意地悪をされても許してしまうのは。受け入れてしまうのは。
もっと、と望んでしまうのは。際限なく、触れていたいと願うのは。
だから。

「ぜんぶ、入っ、た・・・?」

ひく、ひくん、とバイブを咥えた部分が勝手に収縮を繰り返すのを、自分でも感じる。
ゾロはサンジに目を合わせると
「もうちょい、行けそうだが・・・キツいか?」
瞳を細めて窺うように聞いてくる。サンジはふるふると首を振った。
「っ、まだ、へーき・・・ゾロの・・が、ぜんぜんおっき、 ぁンッ!」
言い終わるかどうかで、ぎゅぷッ、と空気を震わせる音を立て、バイブがいっそう内へ、押し込まれる。ゾロの手によって。
(あ・・ぁあう・・・はい、っちゃった・・・)
圧迫感に身体が強張ったのは一瞬だけで、同時に感じた異物の冷たさも、すぐにサンジの体温を吸い取り馴染んだ。
柔らかく内壁に吸いつくような感触を与えるシリコン製の性具を、ゾロがゆっくりと引きぬく。
「ふぁ、あ、・・・っぁぁあぁ」
身体の中心に通う一本の芯を、まるごと引きずり出されるような生理的な脱力感に、サンジは思わず喉を震わせ声を漏らした。
そのままゾロが、じれったいほどの速度で、ゆるく抜き差しを繰り返す。それに呼吸を合わせていくうち、サンジの内肉が玩具に慣れ、自ら絡みつくような動きを見せ始めた。
「すげェ、ヒクヒクしてんぞ・・・バイブ揺れてんの、自分で分かるか?」
性具を咥え込み、無意識にひくつく縁を、ゾロに濡れた指でなぞられ、ゾクッと身体が痺れた。
「ンッ・・・んん・・っわか、んな・・」
「こんな細ェのでも、ぎゅうぎゅう締めつけるんだな、お前。手ェ離したら、勝手に抜け出てくるぜ」
言いながらゾロは、一旦バイブを動かす手を止めて、
「あ、ん、〜〜ッ」
言葉通り、内圧によって押し出される玩具を、また途中で少しずつ中へと押し戻してくる。ぐぐ、ぐっ、と小刻みなリズムで。
体内に戻されるたびに全身にざわつきが増し、サンジの白い肌に粟が立った。枕に預けた腰が、意思を無視して自然に揺れる。
「あ、ああっん ゾロっ、それ、っだめか、も、っ」
途切れに声をもらし振り向くサンジを、視線を合わせたゾロが少し不思議そうに眺めた。なにがダメなんだ、と言いたげに。
だから、ゾロの手が止まることもなくて。
トン、トン、トンとバイブの底を軽く叩かれるたびに、サンジの喉からくぐもった喘ぎが、吐息に混じりもれる。
そしてそのたびに、奥にもぐりこむ玩具に押し上げられるように、体内を通り腹から胸へ、肩へ、首筋へ、額へ、頭上へ・・・何か得体の知れないモノが、ざわざわとせりあがってくるのだ。徐々に、けれど確実に。
「ほ、・・とに・・・だめ・・・ぇっ、ゾ・・・」
声を出したら、言葉を発したら、腹に力を込めた分それだけ、体を駆け上がるソレの速度が増す気がして、
サンジは、できるだけ力をいれずに、鼻から抜ける掠れた声音で囁く。
もう、すぐそこまで、来ているのだ。
射精の前兆に似て、でも、なにか、それ以外の感覚が。指の先まで痺れる何か。発光した 熱の塊のようなものが。
(なにこれ、なに、これ・・・っ)
大きく動かされてるわけじゃない。ただ、奥を小刻みに突かれているだけ。なのにそれだけで、全身がスポンジケーキのようにぼろぼろと。粉々に崩れてしまいそうな感覚に、サンジは抗うこともできず、勝手に溢れる涙も涎も止められない。
「は、あ、ぅうぅ・・ゾロぉ・・・こん・・な、の も・・っ無理・・・むりぃっ」
感じたことのない気持ち良さに、子供みたいに泣きじゃくりながら訴えるサンジに、
「ハッ・・」とゾロは腹の底から抜けるような、短く 熱い息を吐き出した。

欲望で紅く滲む瞳が、何もかもを脱ぎ捨て丸ごと曝け出した サンジの蕩けた痴態を、愛おしさを含んだ視線で。
その眼に、サンジの中を巡る光の塊が、またうねりを増す。
ナカの玩具をずるりと引き抜かれ、また押し込まれ・・・繰り返されて。サンジの内壁が、きゅうきゅうとそれを締めつけた。
頭のなかも、身体の芯も、溶けてしまいそうに。 どうしよう。
ゾロの手で、指で、視線で、声で、吐息で。・・・その全てに。
呼吸すらもうまくできない。はひはひと、荒く止まらない息が苦しくて、サンジは必死で胸いっぱいに酸素を吸い込む。
けど、もうこれ以上、どうしたってふくらまない。

「ゾロ、・・っだめ、イく、イ・・く、ん、イっ・・・ッッ」

「・・・大丈夫だ、達けよ・・・ホラ 見ててやるから」

ひどく優しい声に、ガン と頭の芯がぶれる。その瞬間、ぶわっと身体ごと、宙に浮き上がるような感じがして

「――――んァあ!あ、ック、あ・ああ・っああああぁーーーッッ!」

耐え切れず甲高い悲鳴をあげ、サンジは枕とシーツをびしゃびしゃに濡らしながら吐精していた。

「ぁ・・・ぁ、あ、っ、ハ、・・ッ」
射精を終えてなお、目の前が白い靄に包まれたみたいな、行き場を求めるけだるい感覚が付き纏うのをどうにもできず。
脱力したサンジはぐったりとベッドに横たわり、纏めて繋がれた両腕の間に顔を埋め、なんとか呼吸を整えようと荒い息を吐きだす。
「・・っア、は・・ぁふ・・・・・ゾロ・・・・・・」
ガクガク震えるサンジを、背後から抱き締めるように、ゾロが圧し掛かってきた。
その硬い筋肉の感触や熱い体温に溶かされて、じわっと心が緩む。
もっと触れたくて・・・サンジはなんとか身体を反転させ、手のひらでゾロの素肌を撫ぜた。腰の下の邪魔な枕は、ゾロが除けてくれる。
「すげーな・・・ぐしょぐしょ」
「・・・っ・・」
シーツや枕カバーを濡らしている、サンジの放ったものをからかうように・・・甘く熱い息を耳元で感じ、サンジはぶるっと肩をすくませた。
だってそんなの、ゾロのせいなのに、ぜんぶ。ぜったい。

「ゾロ・・も・・・」
横になったゾロの腕の間におさまると、サンジはそのまま、ゾロの下腹部へと両手を伸ばす。
割れた腹筋の溝を辿り、濃い茂みをなぞり、そして
そこから突き出る、火傷しそうに熱を持った肉塊に。
(すご、い勃ってる・・・ゾロ・・・)
サンジは震える息を吐いて微笑んだ。
「ゾロも・・・ぐしょぐしょ、に・・・なって・・?」
甘えるように言いながら、両の掌で包み込むようにゾロのペニスを撫で上げた。手の中でビクリと、剛直が硬度を増して跳ねる。
先の、少し感触が変わる部分を指先で捏ねると、ぬとっとした先走りがしずくとなって伝い。
「グ・・ッ」という、呻くような低い声が、ゾロの喉から洩れる。眉根を寄せ、こらえるみたいな顔が、堪らなくセクシーで・・・
めまいがしそうだ。
ゾロを見てるだけで心臓が、苦しいぐらい締めつけられて、ドキドキしすぎて、いたいぐらい。
なのにそれすら、甘い疼きに変換されてしまう。
「こんど・・・じゃなくて、いま・・さわりたい、ゾロ・・・・いい?」
・・・聞く前にもう触ってるけど。
思ってみたけど、ゾロが止める様子もないのでサンジはそのまま、手のひら全体を使って陰茎をこすりあげる。
硬い・・・熱い・・・。滑らかな皮膚と粘膜の境目、ここだけ、違う器官みたい。
サンジのモノとも明らかに異質な・・・色も大きさも、形も、手触りも。
何度も亀頭と竿を往復させ、感触を確かめるように、先走りを塗りつける。
拘束されて腕を自由に使えないもどかしさも、サンジの行動を大胆にさせる要因になったのかもしれない。
ぬちゅぬちゅと卑猥な水音を滴らせるゾロとサンジの身体の間で、手錠の鎖がカチャカチャと金属音を奏でる。サンジが手を動かすたびに。
「・・・ッ!」
一瞬息を詰めたゾロが、掻き抱くようにサンジを抱き寄せると、深く唇を合わせ
「ン・・っ?、んんっ」
「加減、できねぇっつったろ・・!」
噛みつくみたいな舌を絡める熱いキスを仕掛けながら、急いたように吐き捨てる。
苦しげに嗄れたゾロの声に、サンジの胸の奥で燻ぶっていた光の塊が、大波のようにうねりをあげて身体の先端に向かって拡がっていく。
舌の側面をぬるぬるとなぞられると、キュウと身が縮こまるような気もする。ゾロのことを、もっと奥へと、飲み込みたがっているような。
ゾロの性器を揉み擦りながら、喉の奥から喘ぎとも呻きともつかない音をあげて、その舌に自分から吸いついた。
分厚い舌で口の中をいっぱいにされるのも気持ちいい。あますとこなく舐められて、愛撫されるのも。

激しさと優しさを併せ持つゾロのキスに、どんどん熱が高まり、サンジの体内をうごめく波が、出口を求めて這いまわる。
さっき達したばかりだというのにまた勃ちあがった陰茎から、とろとろと蜜があふれ、
堪らず腰を寄せるとサンジは、ゾロのペニスにこすりつけるように己の物を合わせた。ぬるりと、互いのこぼす透明な滴りが混じり合う。
「・・ぁう・・っ」
濡れた感触に、ビリっと電気が走った気がして、サンジは息をのんだ。
同時に、バイブを挿入されたままの後腔がきゅぎゅうと蠕動を繰り返す。そこの奥が、疼いてたまらない。
「ぞろぉ・・・きもちい・・・もっと・・・」
絡みあった舌の狭間で不明瞭に喘ぐサンジに、ゾロは唸るように喉を鳴らすと
片腕をサンジの脇から背後へ伸ばし、根元まで納まる性具へとあてがった。
ああ、抜いてもらえる、と思った瞬間、
ヴイィィィィィと激しい音を立てて、中のバイブが振動し始めた。
「――――――ッッッッッ!!」
腹の内側を暴れまわる電流に似た衝撃。
あまりに突然のことで、声なんて出なかった。息を吸い込んだまま呼吸が止まる。
以前にされた、ローターでの刺激なんて比べ物にならない・・・・・・からだ全体、骨までふるえてる。頭のなかまで、全部。
(うそ、ダメ・・っ なんで・・・ゾロ・・・、だめ・・・それ、ほんとに・・っっっ)
苦しくて、怖いぐらいで、なのにそれもまた気持ち良くて。サンジの眼に涙があふれた。

ゾロがスイッチを入れたのだ、と頭で理解する前に
ズルリと入り口近くまで引き抜かれたソレの先端を、前立腺に押し付けられる。
そのまま、ぐりぐりと擦りつけられて。

「い゛―――っんん゛!ん゛んんっっう、ん゛ー〜っンン〜〜〜っっ!!」

痛いほどの快感に、サンジのあげる悲鳴に似た嬌声はすべて、ゾロの口内へ吸い込まれた。





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