優しくしてね?


  【 5 】


続けざまに何度も達かされて、サンジはぼろぼろと涙をこぼしながら、蕩け切った顔でゾロを見上げる。
感じたこともないほどの絶頂を迎えさせられ、いまだ早鐘のように打つ心臓と、荒い呼吸を落ち着かせようと深く息を吸う。
体内ではいまだ竜巻のような快感の渦が暴れ、まるで全力疾走した後のように肺がうまく膨らんでくれず、痛いほどだ。
それなのに
認めたくはないけれど。
(・・・おれ、やっぱゾロに意地悪されんの、すげぇ、好きみてえ・・・)

ちょっと強引なのも。おねがい、って頼んでるのに焦らされるのも。
こうやって、縛られて、押さえつけられてイかされるのさえも。
ゾロにされることなら、なんだって気持ちいい・・・。

「・・・悪ィ・・・無理だった」
ふいに、地を這いうめくような呟きが聞こえ、気付くと、ゾロも同じように肩で大きく息を吐いていた。
「・・・ん・・・?な 、」
掠れの残る鼻声で、なにが、とたずねようとして、ゾロとくっついた腹の間が、やけにヌルヌルしてることに気付く。

「・・・っ・・ゾロ・・・も、・・・?」

こすりあわせてた だけで。
おれの、腹の上で・・・。

いつも、どこか冷静で、
いつもいつも、毎回、毎晩、余裕かまして、サンジをいじくり倒すだけいじくって。
泣いて頼むまで焦らすばっかりのゾロが。
・・・ゾロが。

「・・・・・・」
無言の肯定が、その凶悪に顰められた顔が、なんとなくバツの悪さに照れてるようで。
なかなか見ることのできないそんな表情に、ゾクゾクゾクーとサンジの体に喜悦が走る。
ぎゅううと、心臓が絞られてるような感覚がして。
ただただ、嬉しくて、勝手に視界がにじむ。
同時に、放ったばかりのサンジのペニスがまたぴくんと跳ねて、硬さを取り戻そうとしていた。


たまんねぇ・・・ゾロ・・・もっと・・・
もっと、もっとたくさん・・・


サンジは腕を伸ばすと、ゾロの首の後ろに手錠の鎖部分をひっかける。
引き寄せようとしたその手には全然、力が入らなかったけど。意図に気付いたゾロのほうから、体を寄せてくれた。
「・・・な、ゾロ・・・おれの・・・おねがい、ちゃんときいて・・・?」
イキすぎて、息をするのさえまだ苦しいぐらいの掠れた声で、甘えを含ませて囁く。
「・・・、あぁ」
「・・・コレ、ぬいて・・っ・・・ゾロの、ほしい・・・」
太い首筋に口づけながら、舌をぬるる・と唾液で滑らせ。ぴちゃ、と濡れた音が耳に届き。
「も・・・焦らさねえで・・・おれんなか、入ってきて・・・?」
喉の奥が熱く震える。口に出しながらその光景を想像するだけで、ずくんと内部に疼きを訴えて。サンジの陰茎からまた、とろりと先走りが零れた。
いつもは・・・もちろん今も、ものすごく恥ずかしい、のに・・・。

「・・・っゾロの、入れられて、ナカ、いっぱい・・・ぐちゅぐちゅして・・・」

視線をあげると、目が合って、サンジは思わず微笑んだ。

ゾロの瞳。いつもの意地悪そうなものでなく―――余裕のかけらも残っていない、獲物を目前にした獣みたいなのに、どこか、甘さを帯びた、その眼が見たくて。
おれに興奮するゾロが、見たくて・・・だから。

「おく・・・いっぱい、突かれながら・・出したい・・・っ」

言い終わると同時、中に入ったままだったバイブを引き抜かれ、そこが口を閉ざすより早く、ゾロが突き入れてきた。

シリコンの無機的な柔らかさとも違う、人間の肉の弾力と。
性具とは比べ物にならない圧迫感と、火傷しそうなゾロの熱。
ゾロだけが与えてくれる、その温かさ。
ようやく感じることができたそれらに、サンジは安堵とともに甘い嬌声をあげる。
「ぁァあ―――っ・・おっき、ぃよぉ・・・ゾロぉぉ・・・」
「・・・お前は・・っ!」
達したばかりのまだ敏感な体内を、ずん、と遠慮なく掻きまわされる。
怒ったように喉の奥で唸るゾロが、なのに、いとしくて嬉しくて。サンジはふにゃ、ととろけた笑みを浮かべた。

ゾロも、かつてないほど興奮しているのが分かるから。
それにもともと、ゾロが言いだしたプレゼント、なんだから。
だっておれの、誕生日なんだから。

そんな言いわけを自分に言い聞かせることで、ことさら大胆になれた。
果たしてゾロがそれを見越していたかどうかは分からなかったが。

サンジが素直に想いを口にするだけで、ゾロがこんな風になるのなら、もういくらでも。
はしたなくてもいい。いやらしくていい。
ゾロが、そこも含めて、サンジのことをかわいいと思ってくれているなら。
―――こんなに幸せなことってない。





「それ、っきも、ち、いぃ・・・じんじんする・・・っ」
長いストロークで抜き差しされて、カリの部分が肉壁を擦りながら体内を通るのを感じる。
抜けるギリギリのところから、また体内を割り開きながら侵入されて。ぐちゅう、という恥ずかしい水音と共に。
きもちいい、と、もっと、を何度も繰り返しながら、勝手にわいてくる涙でほとんどべそをかいているサンジを、

ゾロがありえないほど優しい目で見おろしてる――― ・・・むしろそれが逆に怖い。

なんか・・・ 色々、通り越しちゃった気がする。ゾロも。



「・・・ココえぐられんのも、好きだろ?」
甘やかすような声音でゾロが、ペニスを奥のほうの一点に定め、そこを小刻みに突いてくる。
「あ、あ、あ・・っ・・・・やあぁあッ!」
「ほら、今・・すげぇ締まった。さっきもここ押すと、きゅうきゅう吸いついてたもんなァ?」
奥の深い部分、宛がわれたゾロの先端部をそこにぐりぐりと押しつけられるたび、サンジの身体がガクガクと震えを起こした。
引き攣れたように喉が狭まり、足の先まで痺れが這う。

「ああぁだめ、ゾロ、ゾロッッそれだめいく、っんんんッ」

バルブをゆるめるように、徐々に開かれ高みへと押し上げられ。
ゾロの動きに合わせ、ハ、ハ、ハと短く喘ぐ呼吸で頭が真っ白になっていく。
熱い涙が眦に留まらずぼろぼろと零れ溢れ、こめかみを伝い流れる。

サンジは追い上げられる快感にたまらず、ゾロの腕にしがみついた。
無意識に爪を立てたサンジに、ゾロが、底が抜けるほど甘く掠れた声で囁く。
「イけよ。奥、いっぱい突かれて、出してぇんだろ・・?」
「んあっ!・・ふぁあ・・・っ」
「俺も出してェ、お前ン中」
「ん、!んー〜〜っ!!」

その瞬間、サンジは背をしならせ、熱い精を放出していた。
とぷとぷと互いの腹を濡らす体液がぬめり落ちるのも厭わず、打ちつけられるゾロの速度が速まる。
(あぁあああ、も・・もーイッてる、のに、またっ)
射精を長引かせるような激しい動きに翻弄されて。
内部が蠕動しながらゾロに絡みつく。もっと奥へと全てを飲み込もうとしているかのように。
ビクビクしながらゾロを締め付ける、のが、止まってくれない。
(どうしよ、ほんとに、とまんねえ・・っ)
体全身、あたまの中までぐずぐずに溶けていきそうで。
「ああっぞろぉ・・も、いく、 イ、ってる、よぉぉ、ナカ、へん・・んぁぁあんーっっ」
終わらない絶頂に揺さぶられて、サンジは喘ぎ啼きながらゾロに縋りついた。
壊れたステレオのように、はっきりと言葉にならない声が漏れ続けるのを、自分ではどうにもできなくて。
「もーやぁぁ、おねが、っゾロ、もっ、・・・っ」
「あぁ・・・」
すすり泣きながら懇願するサンジに、大丈夫、と言うように。
遠慮のない動きとは裏腹に、ゾロの声はひたすら甘い。

その声・・・耳の中でとろけたハチミツが、あますところなく全身からにじみ出て流れていく感覚に、
なぜか安心して、ふわとサンジの身体から余分な力が抜けていく。
途端、緩んだサンジの奥のさらに―――もうこれ以上行けない部分まで、ゾロの砲身が貫き、
(ッ、んな、おく・・・!)
到達したことのない、初めてのその部分に。
きゅうぅぅと内壁が剛直を締めあげる。 グ、とゾロが息をのむ。 サンジの目の前が真っ白になって―――
「―――――っあうあぁぁ、ァ〜〜ッッ」
膨らみきった風船がパンと破裂するように あっというまに、高みへ放りあげられた。

自分でも聞いたこともない、だらしない嬌声をあげながら、サンジのペニスから蜜があふれ出る、
それにつづき、ゾロもサンジの内へ精を吐き出していた。びゅくびゅくと、いちばん奥に押しつけながら、放出される熱い体液が。
「っひあ、うそ、まっ・・・ゾロぉっ」
打ちつけられ内側を満たす感覚に、一度に何回イッたか分からなくなりながら、
サンジはまた、落下にも浮遊にも似た錯覚を覚えながら、ガクガクと身体を震わせ続けた。







ゾロは荒く息をつきながらも、しばらくサンジが落ち着くのを待ってくれていたようだったが。
「・・・エロくし過ぎんのも考えもんだな」
聞こえるかどうか、呟くと、抱きしめていた腕を解いた。
ゾロの熱さに慣れきっていた肌にひやりとした室温を感じ、サンジはふるっと身をすくませる。
身を起こし、ゾロの腕を掴もうと、まだ余韻で震える腕を伸ばした。

「・・・ゾロ・・・おれがえろいの、やだ?」
(さっきの、って、そういう意味?)
だめだった、ってこと?  もしかして、やらしすぎて退いちゃったとか?
問いたくても、まだ思考がうまくまとまらず、次の言葉を待ってゾロを見つめた。

「・・・アホ。」
「・・・ア・・・!? ンだとテメェ!」
呆れ混じりに吐き出される台詞に、カチンときたサンジは即座に反応するが
「本気でそこ疑ってんなら、怒るぞ」
「・・・だって・・・」
ゾロにじろりと睨まれ、むうと唇を尖らせた。


そんなの、知ってるけど。
サンジに、心もからだもぜんぶ、拓かせるだけひらかせて、
『やっぱり受け入れられなかった』 なんて言うような人じゃないとは思ってるけど。
どんなになってもちゃんと、おれのこと好きでいてくれる、のを信じてるけど。
言葉をくれないことを、不安に思ってしまう。特に、こんな日は。

どうしようもなく愛されてるのは、ちゃんと分かってるけど。
サンジの『好きだよ』に、『俺も』とは言ってくれるけど。
・・・ほんとは、好きだって、言葉で言ってほしい。
たまにでいいから、愛してるって、ゾロの口から聞きたい。

そういうの、ものすっげー苦手だって、知ってるけど。

「ゾロ・・・今日だけで、いいから・・」

  好きだって、言ってくんねえ?

そう―――口にしかけて、やめた。
『お願い』して言ってもらっても、意味が無いことに気付いたから。
これだけは、誕生日を口実に、では寂しすぎるし。
そんなの、ゾロの意思じゃないし。


言いかけた台詞を飲み込んだサンジを前にしばらく無言でいたゾロだったが、
のそりと動き出すと、どこからか小さなカギを取り出し、サンジの手枷をようやく外してくれた。

柔らかな毛で覆われていたけれど、やはり薄く赤い跡が残る手を、恋人が優しい仕草で目の前に掲げる。
かすかに痺れる手首をゾロに癒すように舐められ、ジンとした熱さに、サンジは「ッ、」と息を詰めた。

「・・・可愛すぎるのも、反則だよな・・・」

はぁ、と溜め息をつき、サンジの瞳を見つめるゾロ。

不機嫌そうにも見えるその表情に、だけれどサンジの鼓動がドキンと跳ねる。

意を決して、言いづらいことを口にする時の、ゾロの顔。
ここで一緒に住むぞ、と告げてきたあの時も、こんな顔をしていた。


ぎゅ、と手を握り返すと、視線を合わせゾロを見据える。
間違えたくない。ゾロの言わんとしてることを。
おれだって、ちゃんと理解したい。
そう、思って。

「本当は、お前が寝てる間に・・・済ませちまおうと思ってたんだが・・・」

「・・・・・・うん」

「けど、まあ、そんなん卑怯だよな。俺だけ楽しようとしてたなんざ」

「・・・うん・・・。ん?」

・・・あれ? なんの話?
寝てる間に、って、どういうこと?

あいづちのつもりが、先が読めないゾロの言葉に、サンジが疑問符を浮かべきょと、と首をかしげていると
そのとぼけた仕草のせいで肩の力が抜けたのか、ゾロがふっと表情を和らげた。

ゆっくりとゾロが、サンジの左手をとり、指を撫でる。

するり、とほどかれたときには、

まるで魔法のように、薬指に指輪が嵌められていた。

茫然とするサンジに向けて、 甘く紡がれる、その口から。


「愛してる」


「・・・・・・・・っ」

じわんと熱く、耳が痺れる。
言葉にして、たった五文字。
だけど、はじめてゾロがくれた、大事なことば。

やだ、やだやだ。

泣きたくない。 ゾロの顔、ちゃんと見てたい。

思ってみても、もう勝手に涙が湧いてとどまらず、サンジは「ふええ」と嗚咽を漏らした。

「・・・泣くなよ」

苦笑しつつも、ゾロが優しくサンジを引き寄せ、抱きしめてくれるから。
その逞しい肩に腕をまわして、あやすように背中を撫でられて、嬉しさに、余計に涙が零れる。

「ゾロ・・っ、おれも、・・・っあいしてる」

ぎゅうっと強く抱きつくと、ゾロも同じ思いで抱き返してくれる。
どくどくと、早鐘を打つような鼓動が、ゾロのものか、自分のものか判別がつかないまま。

「一生分の幸せ、今日で使い果たしちゃった気がする」、と照れまじりに言うと、

大げさだな、とゾロが笑って。

それから、少し真剣な顔で、

「これから、もっと幸せにしてやるから」


だから、ずっと一緒にいようぜ、サンジ。


その言葉に、息が止まりそうになりながら、何度も何度もうなずいて、

また泣きながら抱きしめて、抱きしめられて、キスをして。

ゾロ、大好き、愛してる、と何度も繰り返した。





やっぱり今日は、人生最良の日だけど

ゾロといるだけでそれが、もっと幸せな日々、になるんだから。

明日も、明後日も、何年経っても ずっと傍にいられたら

きっと、これからも、ずっと。






















私の中では「サンジくん開発日記」と呼ばれていますこのシリーズ(待てや)

長らくのお付き合い、そしてお読みくださった皆様、ありがとうございましたvv






い、一体何年かかったのか、この連載・・・!
【お道具リベンジ】でリクくださったまりのおねえちゃん・・・お待たせしました!
(今数えたら二年半かかってました・・・そんなに・・・orz)
しかも、もとのリク内容うろおぼえすぎて(待て)結局、なんか好きにしちゃったけど!
そのへん、まりのさん、もう諦めてくださってると信じてる!(いいのか)




2012.9.13追記
前回の話と被ってたので(笑)考慮の末、ラストのシーン、まるっと削除しました〜。
ナミさんとティーパーティーエンド、がどーにも好きすぎるよ私・・・