【 19 】 雪城さくら






 目の前に、全身を映す大きな鏡。

 後ろには、餓えた獣。もはや性欲の塊。

 こういうの・・・絶体絶命っていうんだっけ?



 まさに逃げ場のない状況で、サンジは脚を投げ出して床に座ったゾロの、腿の上に乗っかって・・・
 ちょうど、サンジの背とゾロの腹があわさる体勢で
 ゆっくりと、ゾロの雄を飲み込んだ。
 ・・・正確には、飲み込まされた、だけどな。

 「う・・・ぅふっ・・・んん」
 カリのでっぱった部分を受け入れるときの圧迫感は、いまだ微妙に慣れず、切れ切れに息を吐く。
 ずぶずぶと入ってくる陰茎に、体中の力が抜けそうだ。

 「サンジ・・・ほら、前見てみろよ。お前が俺をくわえてっとこ、丸見えだぜ」
 「ハァ・・・ん、や・・やらしいこと・・言う・・なっ」
 かぷっと耳たぶを食まれて、サンジの体がブルッと震える。
 「こうしたほうが、感じんだろ」
 グンッと腰を突かれて、息を詰めた。
 その拍子に、脚の力が抜け、内のゾロをよりいっそう深くくわえこむ羽目になる。
 「・・・はっ!ふぅ、う、うぅぅ・・・」
 「く、・・・おら、目ェ開けてみろ」
 顎を持ち上げられて、思わず鏡を見てしまう。


 赤く上気した顔で、だらしなく口を開き。
 どろどろと蜜を垂らす性器を晒し、ゾロの凶剣を納める己の姿。

 居たたまれないってなぁこのことか・・・
 ちくしょ・・・涙が出そうだ。 情けねぇったらねぇぜ、今のおれのツラぁ。
 なぁ、おめぇ、興ざめしちまうだろ?

 「ゾロ・・・・・鏡・・やだ・・」
 サンジは、ぎゅぅっと目を瞑った。
 「ん?あぁ・・・おめぇ、自分の顔が好きじゃねぇとか言ってやがったっけな・・・」

 そんな話を前にしたことがあったか?・・・さっぱり覚えちゃねぇが。


 確かにサンジは自分の顔があまり好きではなかった。色が白いだとか、髪が綺麗だとか、青い目が素敵だとか。
 いままで何度か言われたことはあったが、自分じゃどこがいいのか全く分からない。
 どう考えてもレディへの賛辞だろそりゃ。男が色白で、なんかいいことあんのかよ?
 内心そう思いながらも、言った相手が女性なら、ありがたく礼を述べて、倍以上の美辞麗句を送り、
 男に言われた日には、蹴り飛ばして罵ったりもした。表沙汰にならない程度に。
 (『いい男』っつーのは、もっとこう・・・・・・こいつみてぇな、顔も体格もよくて、一本筋の通ったやつのことを言うもんだろ?)
 と。 いくら鍛えても薄くしか筋肉のつかない自分の腹を見て、余計情けなくなってきた。
 なのに、

 「おめぇ、ちゃんと見てっか?すげぇキレーだろーがよ」
 「・・・・・は・・?」
 半泣きになった鏡の中のサンジに向かって、ゾロが何故か熱い声でささやく。

 「顔も体も全部。これ以上綺麗なもんなんて俺ぁ知らねぇぞ」
 「ふわぁっ・・・おめ、ナニ・・・っっ」
 耳に息を吹きかけられて、ざわりと肌が粟立つ。
 ゾロは、白衣とシャツのボタンを外すと、その肌を滑るように撫でた。
 「あぁ?てめぇが見ねぇからだろ。こんなにヤラシイ顔してんの見たくねぇなんて、もったいねぇこと言わねぇよなぁ?」

 『勿体無い』の使いかた、ちげぇよっっ。

 勝手なことをのたまうマリモになにか言ってやりたくても。

 「あ、ぁぁっ」
 ぷつんと尖った乳首を弄られれば、それだけで体が反ってしまう。
 ゾロは、サンジに肉棒を突き立てたまま、あやすように乳首や腹を撫で回した。

 触られていない陰茎が、そのたびトロトロと涙を零した。

 「なぁ、見てみろよ。どこも赤くして、目ぇ潤ませて、滅茶苦茶可愛いじゃねぇかよ? 嫌いだっつうお前がわかんねぇよ」

 「・・・おめ・ の、っほうが・・分か、んっっ・んん!!」

 「ほらヤラシイ。」 となおも腰を揺すられる。
 がぶがぶと うなじや首筋を噛まれ舐め吸われ、
 鏡越しに見る、ゾロの顔が、イヤらしく上気している。
 (おれに、興奮してるんだ・・・ゾロも。)
 『可愛い』とか、『綺麗だ』とか、他のやつに言われても困るだけだったその言葉が、
 猛烈な勢いでサンジの中に染み渡った。

 もしかしてゾロに、そう思われてんのか。
 お世辞とか、絶対言いそうにないこいつが。
 おれのこと、『可愛い』と・・・思ってやがったのか?
 『ヤラシイ』 とか言われんのも、ホントはすげぇ恥ずかしいけど。
 ゾロの目に、おれがイヤらしく映ってるんなら、もういいか。 と思った。








 ゾロの胸に背中を預け、腰を動かす。

 太腿や脚のつけ根、下腹部や胸を、ゾロの無骨な手で愛撫されながら。

 「うぁ、あ、ぁん・・・・く、ふ・・」
 「止まってんぜ?しっかりサービスしろよ」

 ちょうどサンジのいいところにあたるように、ちいさく腰を揺すりながら、ゾロがささやく。
 耳が弱いことを知られているからか、息を吹きかけられたり、舌を突っ込まれて舐められたり、耳朶を甘噛みされたり。

 ゾロの愛撫に、全身がぐずぐずに溶けてしまいそうだ。

 鏡に映った、蕩けそうな顔をした自分と目が合う。

 ゾロが、ヤラシイと言う、あの顔で。

 「目ェ反らすんじゃねぇぞ」
 「うぁぅ・・・そんなされた、ら・・できなっ・・・・ぁ・・」
 「んー?サービスするっつたのはサンジだろ?いまさら『出来ねぇ』はナシな」
 グリュっとそれまで放置されてたペニスの先を擦られた。
 「ひぁあああっっ!!!」

 それだけでイキそうになって、ゾロにもたれかかりしがみつく。

 「降参すっか?」
 「だ・・・誰がするか・・ぁ!!」
 「・・・そ。 残念」

 ゾロがにやりと笑う。

 鏡越しでサンジと目が合う。

 ゾクゾクと、背筋を痺れが走る。



 「ぐちゃぐちゃにしてやろうと思ったのに」



 甘く、ささやかれて
 ペニスの根元をぎゅっと握られ。

 「ゾロ? なんで。・・ぁや・・」

 「自分でうまく動けるまで、イカせてやんねぇ。」

 だからほら、がんばって動けよ。


 そう言われて、サンジは涙目で、腹筋と脚に力を込める。


 ざっけんなこのエロガキ!! 思い知らせてやらぁ!!


 ガクガクふるえる脚を、気力で支えながら、律動を再開した。 
















 ⇒20(刹那様へつづく)