【 11 】 雪城さくら



 「・・・・・・行ったか」

 ふう。と二人で溜め息をついて、目が合った途端、サンジはゾロの背中を思いっきり蹴りつけた。
 密着しているのでそれほどダメージを与えられるとは思っていなかったが。

 「ぐはっ!!・・・なにしやがる!?」
 「それはコッチの台詞だ!!!ああああんなことしやがって!!バレたらどうするつもりだよ!?」
 目を剥くゾロに、サンジはあくまで小声で罵る。
 もう、さっきみたいなのはコリゴリだ。
 「あぁ?俺がそんなヘマするかよ」

 ついさっき!!しそうになってたやつが言うな!!

 と言う前に、

 「けど、悪かったな」
 意外にも素直に謝られて、サンジはなんだか拍子抜けしてしまった。

 「もう・・・いいけどよ。次からは気をつけろよ」
 「あぁ。分かった」
 少しだけ項垂れるゾロが珍しくて、サンジは自分の言葉の意味には気付かなかった。

 「・・・・・・次?」
 ゾロが怪訝な表情で見つめてくるのに、はたと気付く。
 瞬間湯沸かし器のごとく、サンジの顔が真っ赤になった。

 うわぁーーおれ! 『次』って!!またやろうって言ってるようなもんじゃねぇか!!
 「ちが・・・っ違ぇぞ!!そーゆー意味じゃなくて」

 無意識に言った慰めだったせいか、咄嗟に言い訳が出てこない。
 「 ・・・そうか」

 ニヤ、と笑ったゾロは、なぜかそれ以上突っ込まず、きつく抱き締めてくる。
 赤くなったのを隠すために、サンジはゾロの逞しい胸に顔を埋めた。



 顎を捕らえられて口付けられ、舌を絡めて快感に身を捩る。


 「先生の、また勃ってきたぜ」
 唇を合わせたまま囁かれて、くすぐったさに身震いする。

 さっきまであまりの緊張とショックにすっかり萎えていたそこは、キスだけで再び固さを取り戻していた。

 「おめぇこそっ・・」

 ゾロの膝に跨っているから、この男の一物も既にいきり立っているのを、くっついた股間で感じ取る。

 つーか、ルフィたちに見つかりそうになったときでさえ、おっ立てたままだったような・・・。

 「さっきの我慢してる先生の顔、すげぇエロかったからな」

 あの非常事態に、んなこと考えてやがったのかこいつはァ!!

 一体どうやったらここまでふてぶてしくなれるのか。
 呆れを通り越していっそ感心してしまう。

 が、溜め息の代わりに出たのは、甘い吐息だった。




 背中をくすぐるように撫でられ零れる声を、溶け合うようなキスで吸い取られる。
 「んむ・・・ん・・ふぅ・・んぁ」
 背中を這う指が、段々下の方に降りているのに気付いたけれど、縛られているのでその手を止めることも出来ない。
 できるだけ力を抜いて、声を出さないように。ゾロのなすがままにされていると、つつーーーっと内股を伝う温い水の感触に、サンジは「あんっ」と小さく喘いだ。


 「先生・・・ここ、どろどろなんだけど。どうした?」
 「いひゃ・・・」
 どうしたもこうしたもおめぇが氷なんか入れたからだろ!!

 太腿まで濡れてしまっているようで、ゾロの手がいやらしく滑る。
 「ジェルと混ざって、すげぇことになってんぜ?」

 ニヤァと歯を剥き出して笑い、アナルから垂れてきた液体を拭った指を、乳首に塗りつけられる。
 乾いた指で擦られるのとは違うヌルヌルとした感覚に、サンジは仰け反った。

 「ふあぁっ・・・っは・・・・・   あ?」
 「あ・・っぶね・・」
 反動で後ろに倒れそうになったのを、ゾロが支えた。


 「感じすぎて、体支えらんねぇか?」
 「・・・るせっ!誰のせいだと・・・」
 「あ?俺のせいだろ?責任はとってやるよ」

 ふっと笑って、ゾロが手首を縛ったネクタイを解いた。

 「・・・え?」

 そのまま、白衣とシャツも脱がされ、裸にさせられてころんと床へ押し倒される。

 「・・・・・・あぇ?」

 脱いだ白衣を下敷きに転がされたサンジは、状況がよく飲み込めず・・・・・・というか、何をされるかさっぱり分からず、じいっとゾロを見つめた。

 そんなサンジをゾロはちょっと変な顔で睨んで、立ち上がり扉のほうへ向かう。

 「・・・・・・放置プレイ??」
 思わず出た呟きにゾロがつんのめった。

 「あほ。鍵掛けに行くだけだ。ついでに『不在』のプレートも出しといてやるよ」
 「・・・そか」

 鍵なんてもんは、最初から掛けといてほしかった。
 ・・・いや、それはそれで困るか・・・?
 つかあいつ、あんなギンギンに勃起してたのに、よく普通に歩けるな〜。
 人外魔境?? 人間並みの羞恥心とか、感覚とかあんのかね・・・?
 マリモのやるこたぁ分かんねぇな・・・。


 とかなんとか取り留めのないことを考えていたサンジが

 (もしかして今のうちに逃げればよかったんじゃねぇ?)
 と気付いたのは、

 残念ながら野獣が戻ってきた後だった。


 「やけに大人しいじゃねぇか。 観念したか?」
 「す・・・するかボケ!!おれぁまた誰かが来たら困ると思って・・」
 「思って、じっと横たわってたのか・・・?」

 ぐっと答えに窮するサンジにゾロは「まぁいいか」と笑って、

 寝転がるサンジの横に腰を落とした。

 その手にはしっかりとさっきのジェルを握り締めている。


 「さ、乳首と後ろだけでもイケるように、がんばれよ。先生?」

 そう言われた瞬間

 ざわりと立った鳥肌が、羞恥か恐怖か、それとも期待のせいなのか、もうサンジには分からなかった。












 ⇒12(刹那様へつづく)





 次回、いよいよ挿入なるか?(まだなのか。笑)