ゾロサン★リレー(学生パラレル編)
【 1 】 雪城さくら
キーンコーンカーンコーーーン
その日の授業の終了を告げるチャイムが鳴り、生徒たちがぞろぞろと科学教室を出て行く。
「サンジ先生、ばいば〜い」
「おぅ、また明日な。それと、ちゃんと『さようなら』って言え」
「はぁ〜い、さようなら〜」
「サヨナラ、サンジ先生。またね〜」
「ったく・・・」
軽口を叩きながらも、可愛い生徒たちに律儀に挨拶をし、科学準備室に戻る。
自分の机に腰掛けると、胸ポケットから煙草を取り出し、火をつけた。
他の科学教師たちは皆、授業のないときは職員室にいる。
準備室、とはその名の通り、なんだかよく分からない資料や、ホルマリン漬けのなにかしらに占拠されていて、とても落ち着けるようなところではないからだ。
しかし、サンジはこの誰も来ない、小さな部屋が案外気に入っていた。
誰にも遠慮せずに煙草が吸える、というのが主な理由だったが。
教師になって二年目。
もともとこの高校の卒業生でもあったサンジは、他の教師たちにも可愛がられ、生徒たちに慕われ、特に不自由のない教師生活を送っていた。
ただ、一つを除いては・・・
ガラリと扉の開く音。
「・・・先生」
・・・・・・来た。
煙草をふかしながら振り返ると、そこには、緑の髪の男子生徒。
サンジのただひとつの悩みの種。
ロロノア・ゾロが立っていた。
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「・・・ん・・ふ・・ぁう・」
机に座ったまま、男の唇を味わい、舌を受け入れる。
絡ませた舌が苦しくて、開いた口から息を吸うたびに、甘ったるい声が漏れた。
最初のきっかけがなんだったのか、思い出せない。
たかが数週間前のことなのに、なんでこんなことになっているのか、分からないのだ。
その日までは、普通に話して、笑いあってたはずなのに。
サンジが赴任後、最初に受け持ったのがゾロのクラスだった。
初めての仕事、慣れない授業。
落ち込むサンジが、ゾロに「気にすることねぇ、誰でも最初は失敗するもんだぜ」と、
およそ高校一年生とは思えない台詞で慰められたのが、一年以上前。
その時は、「なに生意気言ってやがる」と思ったのだが。
その時から、サンジはなぜかゾロを目で追うようになった。
成績優秀、スポーツ万能。
おまけに剣道部のエースで現部長。
顔も男前だし、体格もいい。
普段は口数少ないが、面倒見のいい性格ゆえ、同級生からも先輩からも(今となっては後輩からも)慕われている男だった。
気に入らない、訳がない。
サンジはそれから、ゾロの姿を見かけては声を掛け、昼休みには一緒に弁当を食べた。
最近ではゾロの分の弁当までこっそり作ってくるようになっていた。
サンジ特製の弁当を食べたとき、ゾロはやっと年相応の笑顔を見せ、そのガキ臭さに、思わず感動してしまったほどだ。
それが、
「先生の唇、真っ赤だぜ。誘ってんのか?」
「・・ふぁ、んっっ」
こいつは、誰だ―――――!!??
毎日毎日、昼休みになるとこの科学準備室へ来て、サンジの弁当を食い、ついでとばかりにサンジにキスをする。
放課後になるとゾロの部活があってもなくてもここへ来ては、
これまた、昼とは比べ物にならないような熱烈な口付けをされる。
それも、どんどんエスカレートして、気付かないうちに白衣の下のシャツのボタンが外されてたり、腰の辺りにゾロの手が這い回ってたりするのだ。
しかも、今日は剣道部が休みの水曜日。。。
目の前にいる男が、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべるのを、サンジは信じられない思いで見つめる。
ここ数週間の悩み・・・
ロロノア・ゾロに、手を出されそうになっている。
それも、とてつもなくエロ臭い台詞つきで。
いや、問題はそこじゃない。
問題は、自分は教師で、こいつは生徒なのに・・・
ゾロにキスされるのが、嫌じゃない。
ということだ。
遅すぎる初恋に気付かない、
サンジ、23歳の秋だった・・・
⇒2(刹那様へつづく)