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「自分で触って、感じてんのか・・・」


言って、ゾロはニヤリとエロくさい笑みを浮かべ、組み伏せたサンジを見下ろす。

軋むベッドに沈まされ ゾクリと、背筋を嫌な予感が走る。


「最初のころは、指入れただけでも痛がってたのになァ?」


サンジはもう、激しい動悸で声も出せず、 ヒッ!と喉を引き攣らせながら、恋人の顔を見つめた。


ツイ、と濡れそぼった屹立を指でなぞられながら、

眼を紅く染めた、その顔を。




〜〜〜なんちゅう状況判断の速さだ!!

つーかなんで よりにもよってこんなところ 見られなくちゃなんねぇ!!

つーか、

「ダラダラに濡れてんぞ、おめェの」

普通そこは恋人なら ほらおめぇ、呆れるとかよ!

俺がいねぇうちに何やってんだって・・・俺以外で感じるなつって怒るとかよ!
いや怒られても困んだけどな?

なんで・・・・なんでこいつ、楽しそうなんだ!?

オナニー目撃した男の反応として それはおかしいだろ絶対!



だって、ロロノア先生、といえば、

予備校でも一番人気の講師で。
厳つい見た目のわりに、教え方は丁寧で分かりやすく、ガタイもよくてかっこいい。
厳しいところは厳しいが、頑張ればそれだけ褒めてくれる。
女子生徒男子生徒問わず、もってもてだった男が。

あんな、強面の、硬派を絵に描いたような、エロいことなんか考えてもいませんって雰囲気の男が。


どん っだけヤる気満々かあああああああああああ!!!






「っ、も、ヤ・・・触んな・・ぁっ」


なのに、サンジの口から漏れるのは、そんな切羽詰って掠れた、甘ったるい声。

今、自分がどんな顔してるのかなんて考えたくもない。


きっとまた・・・、言われる。


「お前な、すげーやらしい顔してんぞ」

「・・・・・・ッ!」

そっちのほうこそ、よっぽどエロい顔してるゾロが、サンジの脚を開かせ。
ギシリ、と頑丈なはずのダブルベッドが、男二人分の重みで軋んだ音をたてる。

ゾロの意地の悪い、からかうような声が、薄暗い寝室に響く。

「ンー?ココ、何入れてんだ?」

「・・ッァ・・!」

開かされた脚の間から、四角いリモコンの先に伸びるコードをクンっと引っ張られ。
「ひゃうッ!」
引き抜かれそうになるローターを、サンジの中が無意識にきゅんと咥えこむ。
軽く引かれただけでも粘膜に擦れ、刺激に身体が跳ねた。



どどどどどどどうしようどうしようどうしよう。
そればっかり考えているうちに。
ゾロだけが サンジの分からない間に 全てを理解して先に進んでしまう。

しかもちょっと気持ちよかったりもして・・・・・・って違うだろ!

ちょっと 待って、おねがい 待って!

「ゾロ、ちょ・・っなんで・・・飲み会は!?」

「あ?お前がなんかおかしかったから、キャンセルして帰ってきた。 まあ・・・案の定、だな」

「あ・・案の定って・・・」

ニヤリ、と目を眇める、その表情に。

こんな状況なのに。

サンジの胸が、ドキンドキンとうるさく鳴りまくる。


だってこんなときですら、かっこよくて・・・、大好きでたまらないんだ、ゾロのことが。

だけど それとこれとは、別の話!!



「ゾロ・・・や・・やめて? な? おちつけっ?」

「ア?んなこと言って・・自分で、使うつもりだったんだろ、コレ?」

「ちが・・ゾロ・・ッ」

どうしよう、どうしよう。
ゾロが、何をしようとしているのか、分かってるのに、
止めることすらできない。身体が、思ったように動いてくれない。
頭の奥にも、モヤがかかったみたいで。

「×××にこんなもん入れといて、『違う』もないだろ。・・・お前が、こういうのが好きだとは知らなかったぜ。悪かったなァ?今まで楽しませてやれねぇで」

悪かった、なんて言いながら、その口元は面白そうに笑みの形に歪められている。

(〜〜〜ヤバイ!ゾロがこの顔してるときは、マジでヤバイ!!)

「ごめ・・・ごめん・・っゾロ・・ッ!」

予想もつかないなんか変なことされる前に、いっそ先に謝ってしまえ、と、慌てて謝罪を口にしてみても。

「ア?なにが?」

「だ・・から、その・・・・こんなコトしてて・・」

「俺がいねぇ間に、自分で弄って、ココに玩具突っ込んで、気持ちよくなってたことか?」

ココに。と、一度姿を見せたローターを、指で中へと押し戻され、ぐにぐにと、内壁をつつかれる。

「んぅーぅっ・・ン」

さっきとおなじ、硬く無機質な感触。
なのに、ゾロにされてる、と思うだけで。

もう、それだけで、おかしくなりそう。


ゾロの手に、コードに繋がれたスイッチが握られ、ゆっくりと、見せ付けるように掲げられる。

ギクリ。身構えるも、固まったままではどうにもできるはずもなく。


スローモーションのようにゾロの指が動き、


「や・・・うそ・・・ヤ!ヤだ・・ ゾロ・・・っ!」


「・・・・・・ もう遅ぇ。」



カチリ、 という音が、やけにはっきり聞こえた。



「―――――――っア!! アアアアアアアア!!!」


サンジのアナルに収まったローターが、激しく震える。

予想もしてなかったあまりの刺激に、背中を弓なりに反らせ、サンジの口から甲高い叫びがひっきりなしに漏れた。

「ハっ。反応すっげぇな・・おもしれェ」

「 ヤ―――――!!やあ゛っぁあああぁぁあ あ゛あぁあ!!!!」

(あ 待っ、ちょっ、ま・・・・っ!!!)

思考さえも、無理矢理もたらされる振動についてきてくれない。
気持ちいいのかどうかさえ、初めての刺激が強烈すぎて、分からない。
必死で手を伸ばして、なんとかゾロを止めようとするのに。

「なんだ、やめてほしいってか?・・んな完ダチで汁噴いてるクセに?」

ピュルピュルと先端から噴出す先走りをゾロに揶揄され、サンジは羞恥で全身を真っ赤に染める。
もっとも、すでに興奮で、どこも真っ赤になってはいたが。

「やあっあ、ゾロ、やだぁ・・」

必死に、訴えてるのに、ニヤリと笑ったゾロに、悪戯に先端を指でふさがれる。

「―――ひ !あ・・いあ・・っ!」

開放できない熱が、

身体中に逆流してズグズグと渦巻く。

尻の中で震える器具の振動もあいまって。

「イ゛っあ ぁ ぁあぁあ〜〜!!!」

開いた口の端から、だらだらと唾液を垂らし、サンジはただひたすら喘ぎつづける。

持て余す熱を、放出したくて、たまらない。

息を吸う暇もないほど喘がされて、
なのに先端を塞がれたままで。イケなくて。

でもほんとは、もうイってんのかもしれない。
さきっぽも、どこも、ぜんぶ。ビリビリして、強すぎて・・・何がなんだかわからなくて。

「っだ・・!や ば、ゾロ、 だめ・・イっちゃ・・・!」

「あぁ・・イケよ。」

「だ め!だめ・・・・ゾロ・・・で・・ない、とっ・・・いみな・・っっ」

必死でそこまでを言うと。
それまで散々サンジを苛んでいた電動器具の動きが、止まった。

ふわっと、突然放り出されたような、妙な感覚。
ゾロがスイッチを切ったのだ。ということを理解して、ぜいぜいと息を吐きながらベッドに倒れこみ。
「ふ・・は、ふ・・はぁぁっ・・」
なのにまだ、中で振動してるような錯覚もあり、放心状態のサンジの身体が、ぶるぶると小さく痙攣を繰り返す。

「すげぇな。ドロドロじゃねぇか・・先からまだ溢れてんぞ」

からかうような、熱い声が、耳に届いても、どこか遠くで言われているようにしか思えない。


ゾロが、塞いでいたサンジの先端から指を離すと、

途端に、

とぽとぽっと蜜が零れた。

放出の兆しもなく。

刺激すら うけていないというのに。

ただ、力の入らない四肢を投げ出すサンジの性器から、滴り落ちる精液を、
焦点の合わぬ目で、なんとなく眺めていた。



「・・・イってんじゃねぇか」

クッと、低く喉を鳴らす、ゾロの独特の笑い方。
そこに、バカにしたようなニュアンスを汲み取って、
「・・から。 やめろっ つった・・のに・・・・・っ」
ゾロ、ひでえよ。
と、少しつまり気味の鼻をすすった。


「どうだったよ。」

「え・・・?」

「気持ちよかったか?道具で弄られんのは」

抑揚のない声で、おもむろに感想を求められて、サンジは少し言葉に詰まる。

はっきり言えば、気持ちよかった。
尻の中で、ローターぶるぶるされると、わけわかんなくなって、
骨まで振動してんじゃねぇかと思うぐらい、なんかすごくって。
脳天突き抜けるぐらいの快感が、たしかにあった。

でも、だけど。
それは、『ゾロだから』で。

ゾロに、されるから気持ちいいんであって。

おれが、そーゆーんを好きだとか、思われるのは心外なのだ。
断じて、そんなことはないのに。

「ヨ、かった・・よ!クソ・・っ」

なのに、そう言ってしまう。

サンジはまだあまり力の入らない腕を伸ばすと、ゾロの肩にしがみついてキスをねだった。

優しく合わされた唇に、れろんと自分から舌を差し込む。
ぬるぬると、敏感な粘膜を擦り合わせ、サンジはうっとりと目を閉じる。

まぁ、コイツが助平なのは今に始まったことじゃないし、しょーがないから、合わせてやんねぇとな。
と、言い訳のようなことを思いつつ。


じゅぅっと舌をキツく吸われて、ジン、と腰の辺りにまた疼きがともる。


「ゾロ・・・・・しよ?」


気恥ずかしさの残る、サンジの要望に、ゾロは、恐ろしいほど優しい笑みを浮かべて

信じられないほど冷酷な声で。

「・・・・・まだだ。」

と囁いた。










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