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「もっと解さねぇと、辛ぇだろ」

ことさらに優しい表情で、言われる。

だけど、ゾロの 声にも、瞳にも。
まったく感情が篭っていない。

そんなことが判るほどは、一緒の時間を過ごしてきていた。

ゾロがこういう顔をしてるときは、ほんとの本気で、怒っているときなのだ。

なんでゾロが怒っているのかは、心当たりが多すぎて、分からないまでも。


「・・・どっちがいい?」

ふいに、甘く囁かれて、それだけなのに、腰に力が入らなくなる。
イったばかりの敏感な身体が、・・・というより後腔が。ひくん、と蠢いた。

「ど・・ちって・・?」

「コレを、俺に突っ込まれんのと・・」

コレ、と、ゾロは男性器の形をしたバイブを手に取り、サンジに見せる。
素材はシリコンでできているとはいえ、かなり精巧な作りのそれは、グロテスク以外の何者でもない。
サンジは、息をのんで、ゾロの次の言葉を待った。

「自分の指で、ナカ解すのと。どっちか選ばせてやる」


・・・おお。 どっちかしかねぇのか!

どうやらこの腐れエロ魔獣は、すぐに挿れてくれるつもりはないらしい。


それならば。選ぶ方は決まっていた。

あんな玩具を・・・・・いくらゾロにされるとはいえ、異物を挿入されて弄ばれるぐらいなら。



サンジは、ゆっくり半身を起こすと、膝を立てて開いた。
ちょうど、ゾロの眼前に、サンジの秘部があらわになる格好で。

そこに、自ら、指を這わせた。


(いや、これも、かなーーーーり恥ずかしいんだけどな!)

ゾロは、サンジが器具を選ばなかったことに気をよくしたのかどうか。
「へぇ・・」と呟いて、サンジの脚の奥を見遣る。

先ほどまで、小さなローターを飲み込んでいたそこは、すでに熱く、しかしきゅっと縮こまって口を閉ざしている。

自分でソコを触るのは、初めてだったのだが、思っていたより随分 狭いのにびっくりした。
いつもゾロにされていることを思い出して、指を入れようとするのだけれど、
どうしても、怖さが先にたってしまう。

ためらっていると、ゾロが薄ら笑いで、後口に指を添えるサンジの手を取り、
「指、曲げんなよ?」
と前置きして、
サンジの中指に、自らの中指を添えて、押し入れてきた。
「ふあ・・あぁぁっ やぁ・・っいき・なり・・」
両者二本の指が、サンジのアナルにぐぷんと入り込む。
「見ろよ。自分が、飲み込んでっとこ」
見ろと言われて、自然目を落とすと・・・真っ赤に色づく口が、サンジとゾロの指を咥えヒクついている。
おもむろに、ググ・・と内壁を押された。
「ひっやぁん、ゾロ・・・や・・っ」
「熱いだろ。お前んなか。」
いやらしい声で囁かれて、ゾクン・・と背中に快感が走る。
いつもゾロを受け入れている場所は、熱くて、ぬるんとしていて、
そこも臓器の一部なんだということをまざまざと実感させられる。
 
初めて 内壁の柔らかさと熱を指に感じ、サンジは目を潤ませてゾロを見た。

「や・・やだ、こんなの・・やだぁ・・っ」

「あ?気持ちいいんだろ」

「いい・・けど・・っやだ!ゾロ、早くして?早く、おれん中、挿れて・・?」


いつも、いたわるように優しく抱いてくれていたのに。
快感が、ないわけではないけれど、痛みのほうが強いサンジを、常に気遣ってくれていたゾロが、

今日はなんだか、怖い。
無茶なことをされそうで・・・・・っつーか実際 もうされてる?

「ああ。待ってろ。もうちょっと解してからな」

それでも変わらぬゾロの言葉に、サンジは落胆を滲ませる。



・・・やっぱダメかー。

泣き落としもオネダリも通用しないとなると、あとはもう、どうしたものか。




だって、恥ずかしいのだ。

ゾロに見られるのも、触られるのも、気持ちいいけど恥ずかしいのに。

一緒に暮らしだして随分たった今でさえ、

どうしても、緊張と羞恥で、身構えて、思ったようにできなくて。

だから、まだ後ろだけでイケなくて・・・・・・・・・・・



(・・ん?・・・・あれ? おれ、ケツでイったんじゃん?さっき・・・・)

夢中になると、周りが見えなくなって、つい本来の目的を忘れてしまうのはサンジの悪い癖だ。
サンジが自慰を行ったのも、元をただせば
ゾロとのセックスで、後ろで快感を得れるようになれば、ゾロが喜んでくれるんじゃないか
とか考えたからなのだが・・・・
ゾロが部屋に入ってきた時点で、そんなことはすっかり忘れてしまっていた。

まぁ、ウシロでイけた。とはいえそれは、ローターの刺激によるものだったのだけれど。


ええと・・・。もしかしてゾロは、オモチャでイっちゃったおれに、怒ってるのかな。

イかせたのはゾロなのにぃ・・・



中に入った指をそれぞれ絡ませ、巧みにサンジのイイところを押してくるゾロに、ぴくぴくとペニスを震わせながら、
恐る恐る視線を向ける。


「・・・・・ゾロ・・・ ごめん な?」


ゾロがいない間に、一人でしててゴメン とか

ゾロじゃないのに、玩具にイカされてゴメン、とか

おればっかりで、ゾロのこと気持ちよくしてやれなくてごめんとか

いつまでも恥ずかしがってて、 してもらってばっかで、 何も返せなくて

ごめんなさい・・・とか。


色んな思いを込めて。





「なァに考えてっか知らねぇが・・・・・」

ハァーと溜め息をついたゾロは、空いた方の手で、サンジの頭を優しくなでる。

「あのな、おめぇは、ただ気持ちよくなってりゃいいんだよ。あんま悩むな?ハゲるぞ」

ゾロは、サンジの表情を見て、やっと、いつもの悪戯っぽい笑顔を見せる。

それが、嬉しくて。

サンジは、中に入ったままだった指を引き抜き、ゾロに抱きついた。


「ゾロ・・・・・・あのな・・・・・・・・、大好き・・・」

抱き締め返してくれる腕の温もりに、酔いしれながら。







* * * * * * * *








「ンあぁぁぁっそ、こ・・・・あハっ・・・うぁ」

「・・ここだろ。おまえのイイとこは」

さっきから、散々焦らされまくったあげく、
やっと探り当てられた前立腺を執拗に擦られ、サンジは甲高い嬌声をあげながら、身を跳ねる。
アナルはゾロの指を受け入れ、唾液で濡らされトロトロになっているというのに、
まだ肝心のモノは与えてもらえず、サンジは上気して涙と汗でグチャグチャになった顔を歪めた。

グリ、グリと指の腹で押され、壁をえぐるように擦られ。
そのたびに、勝手に腰が揺れるのだ。
陰茎も、先から大量に蜜を垂らしながら、開放を求めて上向くも、射精に至るほどではなく。

「あああぁゾロっ・・・ぞ・・・・も。だめぇぇぇぇっヘン・・・なっちゃ・・・ぁ」

「いいぜ、なれよ。何されてもいい、つったのは、サンジだろ?」

怖いほど、甘くいやらしい声で言われ、それだけで思わず、きゅぅぅうーとゾロの指を締め付けてしまう。



(〜〜〜なにされても、なんて、言ってねぇっ!!!)

『どうしたら、許してくれる?』とは聞いたけど!!

『何でもするから』とは言ったけど!!!

必死に途切れながらそんなようなことを言うと、ゾロが、ニヤリと笑ってサンジを見下ろす。
サンジを、というより、立ち上がりきった、サンジの性器を。

「何でもする、ってのはなァ・・・・」

そこで言葉を切り、赤く色づき触れられるのを待っていたペニスに、顔を寄せたゾロは、

「なにされてもいい、ってのと、同じことなんだよ」

言うが早いか、サンジのペニスを口に咥えた。
熱くぬめった舌が、陰茎に絡みつく。
「ふあ・・ぁっぁぁぁ―――――ぁやああんっソレ、っやだってば・・ぁぁあ」

泣きそうな声をあげても、ゾロの愛撫がおさまることはなく。

くびれの、弱い部分を執拗に責められ、サンジの腰が浮く。
「んーーんーーっあ!あ、あ、あぁっっ」
ゾロの短い髪を掴み、見下げると、
ニヤリと笑う、恋人と目が合う。

鋭い眼光に ゾクゾクッ、と、背筋が震える。

いつもは、恥ずかしくてどうしようもなくて、
嫌だって言うと、すぐ止めてくれるのに、
ゾロが、
なんだか、ひどく強引だ。


なのに、いやだと言いつつも

サンジはこみあげてくる愉悦に抗うこともできず、ただ喘ぎ続けた。




ゾロとのセックスは、恥ずかしくて、・・・でも気持ちよくて。

すごく幸せなものだったんだ。
そんな単純なことが、ようやく分かった。

サンジがすべきは、ひとりで自己開発すること、ではなく、

もっと 積極的になること、だったのかもしれない。






焦らしに焦らされたあげく、ゾロに挿入された瞬間、サンジは果てた。

それを、少し驚いたように見遣り、すぐに意地悪な笑みを浮かべるゾロを。

こんちくしょう!!と涙混じりに見上げれば。

目があって。

キツそうに顔を歪めるゾロに、 また、堪らない気持ちになる。

好きだ、好きだと、そればっかり。どんなに酷いことをされても、それでも。

嬉しくて、しあわせで。どうしようもない。こればっかりは。


深く、舌を絡み合わされ、そのまま動かれると気持ちよくて。

もうそのころには、サンジも、我を忘れて恥ずかしいことをいっぱい言った・・・気もするが、あんまり思い出したくない。


結局、何度も何度もイカされ、後ろで味わう快感も、イヤというほど覚えこまされたわけだったが。


ゾロに、玩具使って攻められるのも、けっこうイイかも・・・・

やみつきになっちまいそう・・・・・・



なんてことはもちろん

誰にも、言えない。




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「で?結局、うまくいったのね?それはなによりだわ〜。あたしも、名前使われた甲斐があったってもの・・・・・・・・あ」

「ん?どうしたのナミさん?」


いつものように、ロロノア宅で、サンジのアフタヌーンティーをご馳走になっていた平日の午後。

温い笑顔を浮かべて、延々と続く惚気話を、どうでもよさそうに話を聞いていたナミが、

ぽろりと零してしまった言葉の意味を、

どうやらサンジは気付かなかったようだ。

ちなみに、ゾロは、今日は出勤日。ナミは講義がないため休日だった。


(まったくこの、ゾロのことになると途端にぽややんになる性格、なんとかならないもんかしら・・・)

予備校で講師をしていたときや、今働いているレストランでも。
いつもは勘も鋭く、キリリとしていて格好いいのに。

サンジは、ゾロが絡むと、ほんとに人の話を聞かないのだ。


まぁ、恋ってそんなもんなんだろう、と、今ではナミも諦めてはいる。

恋をすると誰でも、バカになってしまうものなのだと。

ナミも実体験で知っているがゆえに、サンジの惚気も、笑って聞けるのだ。



しっかし、他人の、しかも男同士の、あれやこれやの相談を、毎度聞かされるコッチの身にもなってほしいわよね。

とナミは、目の前の元同僚の恋人とした、密約を思い起こす。


『ナミが、自分の受け持つ男子生徒と付き合っていることを、黙っているかわりに。
サンジに、大人のオモチャを大量に渡せ。』



(・・・ま、アイツも、恋するバカ ってことね)

サンジの悩みを、ゾロに伝えたのは他ならぬナミ自身だったけれど。

くすくすと思い出し笑いをするナミを、

サンジは不思議そうにぽかんと眺め続けた。




真実は、誰にも、言えない。







 E N D






















【自慰サンジと、言葉攻めゾロ】でリクエストしてくださった苺くっきー様、ありがとうございました!!
リクにまったく沿っていない代物ですが・・・(滝汗)お道具とか勝手に使っちゃって・・・あわわ;
どうかご容赦くださいませ〜〜

お読み下さった皆様、ありがとうございました!!







たった3話の連載に、5ヶ月かかった私を赦して・・・