〜はじめてのお泊り編〜
・・・・・・苦しい・・・。
なんか重い・・・。
重苦しい・・・
夢現の中、サンジは自分の上に乗っかる、なにか重たいものを無意識に掴んだ。
なんだこのごつごつしたの。
固ぇし熱ぃ・・・
重てぇ・・・。
しかも頭の下・・・痛ぇ・・・ つか、固ぇ・・・
おれのマクラ、こんなだっけ・・・?
「うぅ・・・ん・・」
うっすらと目を開き、捲きつく『固いもの』を視線で辿る。
そこには、裸で眠る男の姿。一瞬ギクッと体を強張らせたが。
・・・ゾロか。そりゃそうだ。 ・・・じゃぁいいや。
サンジを抱き締め、幸せそうに眠るロロノア・ゾロの姿を認め、その逞しい胸に身を寄せる。
さっきまで、餓えた獣かおめぇはっっ!!!と言いたくなるほど激しく攻めたてられ、気を失うように眠ってしまったのだが。後始末などは、きちんとしてくれたようだ。
・・・どうせなら、パジャマぐらい着せやがれよ。
しかし自分にまとわりつくものがゾロの腕だと分かった途端、安心してまた眠気が襲ってきた。
おれってゲンキンだなぁ・・・。しっかし固ぇ枕め。寝心地最悪だ・・・
そう思いながら、ゾロの匂いに包まれ、うっとりと目を閉じた。
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ゾロは目を開き、寄り添って眠るサンジの幸せそうな顔を眺めた。
さっきまで寝心地悪そうにむずがっていたから、腕を外してやろうかとも思っていたが。
サンジは一度目覚め、甘えるようにゾロにすり寄って、再び眠りに落ちた。
ゾロは目を開くと、その顔に、およそ似合わないふやけた笑みを浮かべる。自分の周りの人間が見たら、顎をかぱーーっと外して呆然とするであろう、優しい笑顔。
サンジにしか見せない、愛しいものを慈しむ表情。
誰かをこんな風に思うのは初めてだ。
ゾロは、布団をサンジに掛け直しながら思う。
サンジがかわいい。
いや、6つも年上の、男に、しかも教師に向かって『可愛い』もなにもないのだが。
その言葉しか出てこないのだから実際しかたがない。
しっかりしているようで、案外抜けているところも、
笑うと、子供っぽくなるところも、怒ると、とてつもなく怖いところも、
からかうとすぐ赤くなるところも、
すべてを受け止めようとする、懐の深さも
生徒みんなを本気で大事に思っているところも
それでも、ゾロにだけは、少し違った表情を見せてくれるところも、
安心したような寝顔も
すべてが愛しくてたまらない。
口ん中に入れても痛くないほど可愛い。
サンジの料理を食べるたびに、本人も舐めしゃぶって食っちまいてぇと思っていた。
実際、耐え切れずに食ってしまったのだが。
サンジは嫌がることも軽蔑することもなく、ゾロを受け入れた。
それどころか、週末は、サンジのアパートに泊まりに来ることまで許してくれた。
・・・まぁ、「先生の家に行かせないと、ずっと学校でコスプレエッチするぜ」などと脅したことはゾロの記憶からはすっかり抜け落ちているが。
ゾロは、ニヤける顔を隠そうともせず、再びサンジをきつく抱き締めた。
「ん・・・・・ゾロ・・・?苦しいって・・」
小さく微笑んで、サンジが呟く。
まだ夢見るような顔で、ゾロの頬を撫でた。
「あぁ。悪い・・・」
ゾロはサンジを絡める腕を緩めると、頬に寄せる手をとり、口付ける。
嬉しそうに目を細めるサンジの、その唇にもキスを落とした。
「んっ・・・んん・・っ」
徐々に深くなるキスに、サンジの口から甘い吐息が漏れる。
「は・・ぁっ、ゾロっ・・・」
潤む瞳で名を呼ばれ、ゾロの体が火がついたように熱くなる。
いったん唇を離し、名残惜しそうな顔をするサンジの耳元に、熱い息を吹き込んだ。
「サンジ・・・・愛してる」
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「ゾロ・・・・・・おれ、っ、おれも・・・」
知らず浮かぶ涙を、ゾロが舐めとる。
サンジは、嬉しくて嬉しくてたまらず、ゾロにぎゅうぅぅぅっと抱きついた。
「・・・サンジ」
「ゾロぉ・・・・・・・・・って、ぇぇぇえ!?」
ぴたりとくっついた下腹部に、なぜか当たる、固い感触。
再び臨戦態勢に入ったゾロを前に、サンジは思った。
(こいつは獣じゃねぇ・・・・・・化け物だ!!!!!!)
この上ない幸せを噛み締めながら。
明日が休みでよかった・・・としみじみ思った。
ENDvvv
そんなバカップルの話(笑)