無理難題





ありえねえ・・・・・
こんな悪夢は早く醒めてくれ
なんで、こんな事に
誰か、嘘だと言ってくれ




「よお、ちゃんと着替えたか?」
ブッと噴出し、肩を振るわせサンジが笑う、俺を見て

「ああ」
まだ、プルプル震えながら笑ってやがる
いい加減にしやがれ、お前が言い出したんだろうが・・・

「なかなか似合ってんじゃねえかよ」
涙流しながら言うんじゃねえ
どう見ても似合ってる訳ねえだろう

「で?そんでどうすりゃいいんだ?」
さっさと終わらせてしまおう

「あ?お前何様だよ、口の利き方から教え込まなきゃなんねえのか?」
さっきまで、笑い転げていたのに、打って変わって冷たい視線に
背中がゾクッとした

戦闘中でもこんな目にゃ、そうそうならねえ
いつもと違うこの状況と、男の視線に眩暈がする
こんな目もするのかと、漠然と考えていた

「言いなおせ。自分の立場を考えろ」
ソファにどさっと座り、足を組みながらタバコに火を付ける
ああ、この所作好きだななどと、見とれていたら
もう一度同じ事を言われた
その目は、やっぱり冷たかった

◇◇◇◇

約束は約束だ
約束は破らねえ
腹を括るか・・・・ほんの僅かな時間だ
ちぃっと我慢・・・大人になってアイツの気の済むようにしてやればいい
腹に力を入れて、感情なくこう言った
「いかが致しましょう、ご主人様」

「やれば出来んじゃねえか」
ははっと短く笑って、タバコを灰皿に押し付ける
「そうだな・・・」
じっと見つめながら思案しているようだ
しばらく考え込んで

「いつも俺にさせてる事、一通りやってもらおうか」
感情の読めない顔でそう言った
いつもお前にさせてる事?それをやれって?
何を考え付いたのか知らねえが・・・

「それで?お前に突っ込ませりゃいいのか?」
は?と、声も出さずにポカーンとしたかと思うと
「俺が?お前に?」
ゲラゲラ笑い出した
「そうして欲しけりゃ、お願いするんだな・・・
やり方は、よく知ってるだろ?それと、口の利き方には気を付けろ」
何を考えてるのか、どこまで本気なのかさっぱりだ

サンジを跨ぐように座った
ソファーが軋む音がする
無表情な目でこちらを見ているサンジにそっとキスをした
「俺は、こんな事しねえぞ」
そう言って、顔を背ける




どうやら、俺に嫌がらせをしたいらしい・・・
いつもの悪ふざけとは、少し違っている
何か怒らせるような事でもしたかと考えてみるが、心当たりは無い

「おい、なに考え事してんだ」
あからさまに、不機嫌丸出しの声がした
「・・・申し訳ありません」
原因が判るまでは、大人しくしていた方が良さそうだ
まあ、コイツの事だ、その内ボロを出す

いつも、コイツにさせている(と言うと語弊があるが)行為を淡々と進める
俺は一度たりとも、強要した覚えなど無いのに
コイツは、そうは思って無かったと言う事か・・・
俺はコイツの全てを判っていた気になっていただけなのか
まだ、見てないところがあるのか
そう思うと、無性に寂しさのような、怒りのような感情が湧いてきた
ここまで、他人に執着した事など全く無い
ここまで、俺に思わせるコイツを全部見たいと思った
コイツの持っているものを全部、一片も残さず
他の誰も見た事の無いコイツを
俺だけが見ればいいのだと
独占欲なんてものは、俺には無いと思っていたが、これがそれなのかもしれないと薄っすら考えていたら
「なあ、酒持って来いよ」
「は?」
「「は?」じゃねえよ、酒持って来いって」
「・・・かしこまりました。どれをお持ちしましょうか」
「ラックの下から3番目の右端のやつ。グラスもな」
キッチンへ行き、言われた通りの酒と適当に選んだグラスを運んだ
「これで、よろしいですか。だいぶ度数が高いようですが・・」
「黙ってグラスに注げ」
コイツは酒に強く無いくせに、度の高いのを飲みたがる
俺にしてみりゃ水みたいな酒でさえ、すぐに酔うってのに
グラスに注いでやると、一気に流し込む
と、案の定
「ごほっごほっ、っっげはっ」
盛大に咽た
「大丈夫ですか」
「うるせえ、黙って続きしろ」



もう顔が赤くなっている
そして、体も
2杯目を喉に流し込みながら、こちらをじっと見ている
見ている、と言うよりは睨まれているようだ
さっきから考えているが、いくら考えても思い当たる節が無い
これ以上考えても埒が明かない、尋ねてみるか、そう思った瞬間
「お前、俺が怒ってるってわかってんの?」
怒ってるような、悲しいような、拗ねてるような口調でそう聞かれた
「はい」
これしか言いようが無い、怒っているのは解るが理由はさっぱりなのだから
「なんで、怒ってるかわかってんの?」
ここは、正直に答えるべきか否か
だが、理由が解らなければこのアホみたいな時間は終わらないのだ
「いいえ」
そう答えると、「はあ」とため息を吐かれた
無性にムカつく
「お前さあ、理由もわかんなくて、そんな恰好してんの?」
言いながら、もう3杯目だ
「もう、それずっと着てろよ、明日からそれで生活しろ、な?」
「で、理由ってのは、何なんですか」
酔っ払いの言う事は無視だ
「だから、明日からそれ着て生活しろって、メイド服で鍛錬とかメイド服で戦闘とか」
「ですから、理由を」
めんどくせえ
「植物とは話になんねえか、やっぱ」
「理由を言ってくださらないと、弁明のしようもありません」
もう、そろそろ我慢も限界だぞ



今度はだんまりか・・・
ため息も出ねえ

「・られた」
「は?」
「見られたんだよ!!!!」
何をだよ
「ロビンちゃんに、見られたんだよっっ」
だから何を
「キスマークを!」
「キスマーク?」
なんだそりゃ
キスマーク見られたってだけで、俺はこんな恰好させられてんのか?
頭の中で、小さな音がでもはっきりと聞こえた
何かがはじける様な音を

「だから言っただろ!服で隠せないところには付けんなって!いつの間にあんな場所につけたんだよ、どうやったって隠せねえじゃねえかよっっあーもう信じらんねえ、どっかにタイムマシンねえのかよ乗せてくれよ頼むから」
そう言いながら、俺を蹴りやがる
「ソレが原因で、俺はこの恰好させられてんだな?」
「あ?」
何をやらかしてしまったかと、真剣に悩んだ自分が悔しい
そうだ、コイツはこういう奴だったじゃねえか
自分だけの理論で俺に粉をかけてくるような奴だったじゃねえか
もう、言いなりになる必要も、こんなの着てる必要もねえ
「あ。お前、何勝手に脱いでんだよ、お れ様の ん?   あ・・・れ?」
上に乗っかってしまえば、こっちのものだ
「おい!てめっ」
威勢のいい事言ってられんのも、今の内だ
せいぜい喚いとけ
「約束なんかした覚えはねえ」
「え?」
出来ねえ約束なんざ、最初からしねえ
どう考えたって無理だ

「見えるところには付けねえなんて、そんな器用な真似が出来るかっ」
「えっ、ちょっ・・・タンマ・・・っ」
形勢逆転、心なしか涙目なコックを押さえつけ
首に吸い付き盛大なキスマークを付けた
「うあっ、ばかっ やめろーーーーーーーー」

場所を考えて付けるってもんじゃねえだろ、そんな話無理なんだよ
身をもって知りやがれ、エロコック!




無理難題
[道理に合わないいいがかり。できないことがわかっている問題や、とうてい承服できない条件]

____________________________




愛しのマイハニィ、梨乃さんにいただきましたーv
さすがサンジスキー様vサンジくんがかっこいいよーvv
ゾロがメイドコスで敬語ってものすごい破壊力(何)ですが
優しくて男前で、かっこよかったですvさすが梨乃さん〜v
キスマークつけないように・・・なんてそんなこと考えながらヤれるほどの余裕ないって言っちゃうゾロが
好きです!(笑)
そして最後は俺様ですてきvv

梨乃さん、素敵な小説ありがとうございましたーvv


2008.12.25