誕生日には俺をプレゼント・・・なんて、そんな薄ら寒い事を考えていた訳では無かった。
第一、自分の気持ちにすら気付いていなかったのだから。
全ては、酔いと勢いによるものだ。





プレゼント






あれは、この船に乗って初めてのゾロの誕生日。
散々飲み食いし、大騒ぎして誕生日パーティにかこつけた宴会が終わって。
残ったのは、後片付けをしている俺と。
まだ飲み続けているゾロだけだった。

今から考えると、俺も相当酔っ払っていたんだろう。
パーティの間、ゾロの機嫌がすこぶる良かったこと。
俺の料理を食って「美味ぇなこれ」などと、ボソっと呟いたこと。
驚いて「美味いか?」と聞いたら、「ああ」と答えたこと。
それらに、気を良くしていたのもあるかも知れない。
後片付けに、キッチンと甲板を行き来していた俺だったが、ふと足を止め。
つい聞いてしまったのだ。

「あー・・・何か、プレゼント・・・欲しいもんあるか?」

実は、ゾロに誕生日プレゼントを用意してなかったのは、俺だけだった。
最初は、普段喧嘩ばっかしてるヤツにやるプレゼントなんかねぇ、なんて考えていたのと。
パーティに振舞う、特別料理がプレゼントみたいなもんだから、取り立ててプレゼントなんかやらなくてもいいと思っていたのだ。
だけど、みんながプレゼントを渡す中、何となく居た堪れない気持ちになった。
ゾロは別に、俺に期待の目を向けてはいない。
拘ってるのは、俺自身だ。
それでも、いつもの俺なら言わない台詞。

ゾロは暫く何も言わず、俺を観察するようにじっと見て。
こう言った。

「いらねぇ」

一刀両断、バッサリと斬り捨てられた。
こっちとしても、今更引き下がれない。
いらないと言われれば、逆に何が何でもプレゼントしてやる!
なんて息巻いて。
「はぁーーー!?・・・この俺様が折角何かやるっつってんのに。何だその言い草は!何かあっだろ?何か!?」
必死に食い下がってしまったのは、少なからずショックを受けたからってのもあった。

だって、ゾロが。
ゾロが、俺からのプレゼントは要らないって言ったのだ。


考えたら、こいつは俺の名前だけ呼びやしない。
俺にだけは笑顔を見せない。
つか、普通に会話すらしたことすら皆無に近い。


「てめぇ、そんなに俺が嫌いか?」

ポロリと零れ落ちた言葉は、きっと本音。
今まで目を背けていた、ゾロへの気持ち。
しこたま酔っ払って、冷静な判断力が落ちて。
理性的な思考力が鈍っていて。

だから、あんな事を言ってしまったのだろう。

「俺は、てめぇが好きなのに」

ゾロの顔が、驚きで固まっている。
口に出して、驚いたのはゾロだけじゃない。
自分自身もだ。
俺・・・ゾロが好きだったのか?

そこで、これまでの自分の言動に納得した。
ほっとけばいいのに矢鱈絡んだのも、どうにかしてこっちを見て欲しかったからだ。

言葉にして初めて気がついた。
だからって、こんな告白。
どうやって、取り繕えばいい?
これからまだまだ、ずっと一緒に航海していく予定なのだ。
気不味い思いをして、過ごしたくない。
・・・つか。
何か、弱みを握られたような気がして、悔しい気もする。

気もするが・・・

そうだ。
俺は酔っ払っているんだ。
これは、酔っ払いの戯言なんだ。

勝手な解釈で、口から出たのは。

「てめぇ・・・溜まってんじゃねぇか?ここ暫く島に着いてねぇしよ?
誕生日プレゼントに、抜いてやろうか?」

冷静に考えると、とんでもない事を言ってると判る。
こんなの、さっき以上に冷たくあしらわれるのだろうと思う。
だから、突っぱねられる前にゾロの股間に触れた。
勃たせてしまえば、こっちのモンだと思った。
何がこっちのモンなのか判らなかったが、兎に角何かに必死だった。

頭で考えるより、行動が先に出る。
理性より感情が先行して、自分はゾロと触れ合いたいのだと知る。



「いいんだな?」



それまで黙っていただけのゾロが、俺の頭を掴んで、正面から見据えた。
その目に震えが走る。
いつから・・・こんな目をしていたんだ?
ゾロの目は欲情の色を表していて、見つめられるだけで犯されているような・・・
そんな錯覚に陥った。
次に上から下まで舐めまわすように視線を這わされ、さっきから熱く疼く部分がじわりと濡れた。



「てめぇがその気なら、俺はもう止めねぇぞ」
「え・・・あ・・・ゾロ?」


自分から仕掛けて置きながら、間抜けな声をだしてしまう。
思ってもいない展開に、着いていけないのだ。

だって、ゾロが・・・?
俺がその気なら止めない・・・って?
どういうことだ?


ボーっと考えてる内に、いつの間にかシャツはすっかり肌蹴ていて。
下半身は剥き出しになっている。

「ちょ・・ちょっと、待て、ゾロ。おい、待てって・・・こら!」
「煩せぇ、黙ってろ!ヤらしてやるつったんじゃねぇのか」
「ぬ・・・抜いてやる・・って言っただけだ!」
「同じようなモンだろ?」
「てめ・・・ヤれるなら誰でもいいのかよ!」

一瞬、ゾロも俺が好きなのか?と勘違いしそうになった。
いくら俺から仕掛けた・・・って言っても、あんなに熱く見詰められたら、しょうがないだろう?
だからって、キレるのはお門違いなのは判ってる。
そもそも、ゾロの気持ちを期待してた訳じゃ無い筈だ。


「おい、こら!このアヒル頭!!」
「なんだよ、クソ緑!」
つい、恨みがましい目で睨み付けたら、耳を引っ張って怒鳴られた。
「その無い頭に叩き込んでおけ!俺はな、商売女は別として、気がねぇ奴には手ぇ出さねぇ。
ましてや、男相手にそんな気になるか!判ったな!!」
耳元で怒鳴られ、余りの音量に何を言われたか、咄嗟に判断できない。
(な・・・なんて言った、今?)
気がねぇ奴には・・・とか何とか。
ってことは、え?・・・え?
「・・・・もしかして?」
「俺もてめぇが好きだって言ってんだ。いい加減判れ」
「信じられねぇ」
「なんでだ?」
「だって、てめぇ・・・俺からプレゼントいらねぇって・・・」
「あ?もう貰ったじゃねぇか」
「何を!?」
何もゾロにやった覚えなど無い。
だからこそ、欲しい物があるのか?と聞いたのだ。
「美味い料理と、美味い酒。それから、てめぇの楽しそうな顔」
ゾロの口から飛び出した台詞に、絶句した。
「俺の好物が一杯あった。酒も、俺が気に入ってるモンばかりだ。いつも突っ掛かって来るてめぇが、今日は違った」
それは、てめぇだろ?
今日のゾロは機嫌が良くて、俺の料理を美味いと言って。
それだけで俺は嬉しくなったんだ。
ゾロの好物を教えて貰った事なんてなかったけど、どんな食材でどんな味付けが好きか。
そんなの、頭の中に全て入ってる。
喜んでくれたらいいけど、あのゾロだ。
『美味い』なんて言葉、これっぽっちも期待してなかったから。

あれ?
俺は、いつからゾロが好きだったんだろう?
酔いが身体中を支配していて、考えがクルクル回って答えが見つからない。


「そういう事だ」
「何が、そういう・・・」
自分ですら、掴みきれない答えを、あっさりと突き出される。
「同じだって事だ。てめぇも俺も、お互いこうしてぇ・・・って思ってたって事だ。」

ニヤリと笑うゾロに、心臓が大きく跳ねた。
いや、それより・・・混乱していてすっかり忘れてた。
ゾロの手に尻を撫でられて、下半身が素っ裸だと思い出す。

「ゾ・・・ゾロ・・・あの、えーーーと」
「なんだ?」
「いや、その・・・」
「怖いか?」
「だ、誰が!!そっちこそ、ビビんじゃねぇぞ!」
ああ、この滑りまくる口が憎い。
俺は、せいぜい扱きっこくらいしか考えて無かったのだ。
無かった・・と思う。
多分。
ゾロにあちこち触れられたいとか、ましてや抱かれたいなんて・・・
・・・思ってたのだろうか?
自分でも自信は持てない。

上から見下ろすように、ゾロが俺をジッと見てる。
絶対ヤる気満々だ。
つか、なんでそんなに嬉しそうな顔してんだよ。
ゆっくりと降りてくるゾロの顔を間近に見ながら、寸前まで迫ったきた時に、思わずぎゅっと目を瞑った。
ふに・・・とゾロの唇が押し当てられる。

熱を持った舌が、閉じていた口を抉じ開けて進入してきて、俺の舌に絡まる。
ズクンと重い感覚を下腹部に感じ、中心が持ち上がって、ゾロに触れられるのを待っている。
無意識に腰を押し付ければ、ゾロの左手が軽く力を込めて握った。

「く・・・あ、ゾロ・・・」

向かい合って座ったまま、ゾロが俺の息子を扱いている。
有り得ない・・・
ゾロが、ゾロが俺にそんな事をするなんて、想像もしたことが無かった。
こんな顔して、俺を触るんだ・・・
シチュエーションだけで、イってしまいそうになる。
ゾロの頭が段々と降りてきて、胸の突起の辺りで止まった。
ささやかに色づく場所を舌先で突かれて、自分じゃ無いような声が出る。

「んん・・・そ・・な、とこ・・はぁっ!!」
「そうやって、感じてろよ。そのまま力抜いてろ」
「んあ・・?・・・な、に・・・」

を?・・という言葉まで、言えなかった。
ゾロの指が尻の穴に入れられたのだ。

「き・・もち・・わり・・・・」
「痛くねぇか?」
「・・たく、は、ね・・・・」

どうやら、アルコールのお陰で、痛みが軽減されているようだ。
グリグリ中を掻き回されて、変な感じが込み上げて来る。
ゾロの首に腕を巻きつけ、ギュっと抱きついた拍子に、ゾロの指先がグリっと何かに触れた。
同時にビクンと跳ねる身体。
初めて味わう感覚に、頭の天辺まで痺れが走る。
容赦無く攻め立てて来るゾロの指に、自分の意思など関係なくビクビクと身体が震えてまう。

中心に熱が集まり、射精感が高まって。
俺は無我夢中で訴えた。
「ゾロ・・・来い・・・俺の中に、来・・てくれ!」
「なんだ、余裕ねぇなあ・・・もう少し、てめぇの啼いてる顔楽しもうと思ってたのに」
ニヤニヤ笑って言われても、実際余裕が無いのは確かで。
今すぐにでも、ゾロが欲しかった。
さっきから脚に当たるゾロの太い肉棒が、俺をより感じさせていたのも事実だった。
「そんなに、欲しかったらくれてやる」
指を抜いたと同時に、熱い塊が下から貫いて来た。
(キツ・・・、でも・・・ゾロだ)
なんて、考えてるゆとりなんて、すぐさま無くなった。
力強い手が、腰を掴み。
下からガンガン突き上げられて、揺さぶられて。
もう何が何だか判らない状態になって、髪を振り乱し、嬌声を上げ。
俺は頂点に達した。



事後、ハァハァと息を整えながら、一気に熱が引いていき。
ついでに酔いも冷めていき。
猛然と恥ずかしさが込み上げて来る。

これじゃあ・・・
これじゃあ、俺自身がプレゼントみたいじゃねぇか?
女の子がバージン差し出したみたいで、居た堪れない。
更に、恥ずかしくて目を逸らしてしまった自分が、らしくなくて悔しい。


「いいもん、貰った」

もう一つ羞恥に輪を掛けるような台詞に、睨み付けようとして、出来なかった。
ゾロが、心底嬉しそうに笑ったから。


「それは、何より・・・」

出てきた言葉はこれだけで。

なんだか、可笑しくなって。
ゾロと二人で笑った。






******




「終わったか?」
誕生日パーティの後片付けが終わった頃を見計らって、一人静かに呑んでいたゾロが声を掛ける。
「ああ」
ゾロの隣に腰を掛けて、グラスを差し出すと、「お疲れさん」と笑顔を向けて酒を注いでくれて。
「あの料理が美味かった」とか。
昼間の戦闘時の事を持ち出して「あんな無茶すんな」とか。
俺にだけに見せる顔で、語り掛けてくる。
それらに「また作ってやるよ」とか。
「その台詞、そっくり返してやるよ」とか。
俺もゾロにだけ見せる顔で答えて。
「待たせたな。今年も有難く受け取れよ」
今更、誕生日なんて関係なくヤりまくっているが。
この日ばかりは、特別な気持ちになるから。
リボンを掛けたつもりになって、鮮やかに笑ってやるのだ。
「んじゃ、まあ遠慮なく」
ゾロが面白そうに笑って、プレゼントの包みを開くように、俺が身に纏っている物を剥いでいく。



自分の気持ちすら判らず、ただ、突っ掛かって、喧嘩ばかりしていたあの頃。
酔いが気持ちを晒したのは、自分でも気付かない内に、感情が溢れかかっていたのだろう。
余りに拙かった自分を、思い出せば恥ずかしい。


だけど。


あれから、少しずつ。
取るに足らないような小さな事を積み重ねながら、此処まできた。

交わす言葉は、気づかぬ内に優しいものに変化していた。




「大事なプレゼントだ。大切に扱えよ?」
「は!いつもこれ以上ねぇってくらい、大切に扱ってるだろうが」
「よく言う。いつてめぇに壊されっか、気が気じゃねぇんだよ」
「簡単に壊れるタマか?」

軽口を叩き合いながら、キスを繰り返し。
互いの身体に触れ合って。
夜の闇の中、何度も何度も抱き合った。


「誕生日おめでとう、ゾロ」


願わくば、これからもずっと。
ずっと、この言葉を・・・




END















まりのさんから、SSもいただいてきましたーv

まりのさんちのサンジくんは、負けん気強くて、
ぽろっと口を滑らせて自分を窮地に陥れちゃうような、ちょっと天然さん(笑)
なのにかっこいいのよーーvv
すごく可愛いし、でもちゃんと男の子なの〜〜vv
しかもゾロのことが大好きなの〜〜vv(全てゾロ主体で考える女)
はぁぁぁあvvサンジ君ったらゾロの欲に濡れた目に●され(強制終了)


まりのさ〜んvありがとうございましたーーvv


プレゼント。ゾロの誕生日プレゼント。サンジがプレゼント。
最高です!!(笑顔鼻血)