今の今まで、腕の中にあった温もりが急速に消えていく。


こらえきれない喪失感に、サンジは声をあげて泣いた。





ちっちゃいゾロを召し上がれ♪ 6





「う・・あ・・・・・・うわあああああああああああん!」


「おーおー。ぶっさいくなツラになってんぞおめぇ」


「・・・・・・うえええええええええええええええん!!!」



こんな悲しんでる仲間を前に、なんたる言い草か!!
とか、
なんでこんなときに笑ってられんだゾロ!!
とか。
でももうそんなことどーでもいい。


だって、ちっちゃいゾロが、いなくなってしまった。

まるで夢か幻だったかのように。

確かにあったのに。 ここに、いたのに。



「・・ったく、いつまで泣いてんだてめぇは」

呆れたように言われるのに、サンジはギっとゾロを睨みつける。

泣き喚いた顔ではちっとも威力はないだろうけれど。


「だ、っうぶ、だっで、ぞろがあああああああ」


涙も鼻水もだらだら垂らし、しゃくりあげながら号泣するサンジを、ゾロは少し、困ったように見下ろした。

その顔を見て、また涙がこみ上げる。


だって、好きだったんだ。

たった数日しかいなかったけれど。

小さいゾロも。本気で好きだったんだ。

かわいくて、凛々しくて。大好きで。

大人になっていくのを、ずっと見ていたかったのに。



「うべえええええええええええええ〜」

「オイぶさいく。」

「ひでええええええええええええ」

もう コイツきらいいいいいいーーーー!



蹲って泣き喚くサンジの横にしゃがんだゾロが、ゆっくりと、話しかけた。


「おめぇの前に居んのは、誰だと思ってんだ?」


静かな、台詞が。

耳から脳へと届き、理解をしようと頑張るも、なんだかよく判らなくて。

サンジはしばらく経ってから、ようやく顔をあげる。


その間。ゾロは黙って、ずっとサンジを見ていた。


「・・・う?」

「そろそろ、気付いてもいいんじゃねえか」

「・・はぇ?」



からかうように言われるけど、やっぱり意味が判らない。

ひく、としゃくりあげると、ゾロが笑って、サンジの頬を伝う涙を舐めとった。


「6年待ったんだぞ、こっちは。」


見あげる先に、優しい眼差し。


「・・・・・・・、ぞ、ろ・・?」


「また会えるって言っただろ。だから、泣くな。」



その言葉で、ようやく。


遅すぎる、ぐらいではあったがようやく、すべてを理解した。



仲間の男と、そいつによく似た少年。

どちらにも、恋してしまったのは。

本当は、どこかで気付いていたのかもしれない。

同じ匂いがする、ことを。











優しく、頬をなでられて、それなのにまた、涙が溢れる。



「お前と、あのレストランで会ったときな・・」

「・・・ん・・?」


体勢を変え、サンジを腕の中に抱き締めながら、ゾロが語りかける。

昔話をしているようなそのトーンに、サンジは、ゾロの体温にぽぉっとなりながらも、相槌をうった。


「ずっと、夢だと思ってた相手が、そこに居んのが信じられなかった。実際、あの小せぇのが現れるまでは、実感なかったしな」


「・・・ゆ、?」


「6年前、夢で見た男が、そのまんま、目の前に立ってんだぜ?同じ人間だと、信じろってほうが無理あるぜ」

「・・うん?」

「俺が、夢の中で会った、なんつっても、お前、信じねえだろ?」

「・・ふ?」

「・・・・・単に、鈍いのか、計算でわかんねェフリしてんのか、それはどっちだ?」


ぎゅぅ、と、力強く腕を締められる。

その熱さに、目を固く瞑るとサンジはぷるぷると首を振った。


「だ・・だ、って・・・あんな・・かわ、いかっ、た、のに・・」

ひく、ひいいっく、と息が詰まる合間に、なんとかそう言ったのに、またしてもゾロに苦笑された。

「あれから何年経ったと思ってやがる」

あれから、というのはゾロにとってであって。

サンジにとっては、つい先ほどのことなのに。

「だっ、うくっ・・・こ、んな・・・ごつく、なかっ・・・・うえええええ」


「やっと見つけたってのに。俺には言わねえのか。ちいせェほうがよかったか?」


頑ななサンジに、ゾロが苦笑する。


その言葉に、弾かれたように顔をあげた。




さっきまで腕の中にいた、小さいゾロと、
このゾロが。
同じ人間だなんて 今も、信じられない。


何を言えばいいのか、は判っているけど。

言ってもいいのか、迷う。


けれど、


見つめるその瞳の優しさに。甘い声音に。


「ど、どっちも・・!」


サンジは、また涙を溢れさせ、震える声でつぶやいた。



「ゾロ・・・・・・ゾロ・・・・・・・・・好、き・・・・・・」


「・・・やっと言いやがったな。」




目を細めた、男の、顔がゆっくりと近付く。


唇が触れる、一瞬手前で、


小さく、 「俺もだ。」 という声を聞いた。













出会ったのは、どちらが先だったのか。


こうなることは、偶然か、運命か・・・


きっとそれは、神様にしか、判らない。









E N D

























とてつもなく長い間お待たせいたしました(約一年;)
これにて完結です。
結末、予想通りだったでしょうか、それとも期待はずれだったでしょうか・・ドキドキ




なにはともあれ。
サンジお誕生日おめでとうーーー!!二年越しの愛をこめて!!!

お読み下さった皆様、続きをお待ちくださっていた皆様、
本当にありがとうございましたーーー!!!



雪城さくら