【 21 】 雪城さくら






 まどろむ意識の中、優しく髪を梳かれる感覚。



 ふと覚醒して、サンジは目を開いた。



 明かりもついてない、真っ暗な教室に、月明かりだけが差し込む。
 うっすらと、自分の隣にある人影が見える程度。
 「起きたか?」
 暗闇で、覗き込むようにサンジを見るゾロ。
 そのいたわるような声音が妙に気恥ずかしい。




 「ん・・?おれ、寝てたか?」
 「あ〜・・・寝てたっつーか。気ィ失ったっつーか・・・」



 ・・・・・・ヤリ過ぎて気絶したってか。あぁ〜おれってば情けねぇ。



 言いにくそうにするゾロの頭をポカッと殴って、起き上がる。
 「さ。んじゃぁ帰るか」
 明日も仕事だしな。早く帰ってシャワー浴びてぇ。
 ちっと股の間に違和感があるけどよ。まぁ我慢できねぇ事もない。
 「・・・なぁ」
 不機嫌そうにゾロに声を掛けられてそちらを見れば、小さく蹲るゾロが、月明かりに慣れた目に写る。
 「ぁあ?んだよ。早く帰んねぇと、学校閉まっちまうだろ?」
 「いや、学校はとっくに閉まってるんだが、それより、」
 「っはぁああぁあああ!?」



 閉まった!?学校が!?
 ってことは出られねぇってことじゃねぇか!?



 校舎が施錠されたということでサンジは軽くパニックになった。
 勢いつけてゾロに詰め寄る。
 「おい、どうやって校舎出るんだよ!?閉じ込められちまったのか!?」
 「いや落ち着け。学校からはどうとでも出れる。それよりだな、」
 「っつーかおめぇも起こせよ!!今何時だよ!?」



 おれ何時間寝てたんだ!?それより何時間ヤってたんだよおれら!!



 あわあわと服を身に付け出すサンジに、焦れたようにゾロが呻った。



 「人の話を聞けアホ教師!!」



 イラついたように怒鳴られて、びくっと肩を竦ませて黙る。



 こいつめ〜。さっきまで散々すき放題した相手に向かって『アホ』とはなんだ!




 「あんたは、俺の・・・恋人になったんだよな?」




 いっちょ説教でもしてやろうかと口を開こうとして。自信なさげに吐かれたゾロのセリフに唖然とする。
 こんな風に確認されるとは思ってなかった。いつも自信満々で、『お前のものは俺のもの。俺のものも俺のもの』を地でいきそうなゾロが。こんなに不安に思ってるなんて。



 「・・・さぁ?そりゃどーかね」



 だからって、安心させる言葉なんか言ってやんねぇよ。



 悩めばいい。



 おれが、こいつのことばっか考えてたように。



 ゾロも、少しは悩め。




 人のことを無理やり押し倒す前になっ!!




 や?悩んだからこその奇行か?
 それにしてもやりすぎだろ。いろんな意味で。




 ・・・おれも人のこた言えねぇがよ。と、初めての癖に散々乱れて喘がされ、啼かされた記憶も蘇りそうで・・・恥ずかしくなって。帰ろうか、と腰を上げると
 後ろから、ゾロに羽交い絞めにされた。



 思わず「ふぎゃっ!」と裏返った声が出る。
 「俺のもんだって言え。じゃねぇとこのまま放さねぇからな」
 焦った言い方に、薄く笑いがこみ上げる。




 「・・・だから、てめぇはガキだっての」
 「あぁ!?」
 「んなこと、言わなくても判れ?」
 「・・・・・・すまん」




 サンジの肩に顎を置いて、唸りながらも謝るゾロ。
 こんなしおらしいのも珍しくてかわいいけどな。



 やっぱおれ、俺様ないつものゾロも好きだわ。






 「サンジ、好きだ」
 「・・・さっき聞いたよ」
 「あぁ。でも好きだ」
 「うん。」
 「サンジも、俺が好きだろ」
 「うん」
 「そうか・・・」



 そこでまた、ぎゅっと抱き締められて。
 胸の奥がほんわりあったかくて、でもちょっと苦しくて。




 幸せってこういうもんかぁ・・・



 生まれて初めての、両想いってやつを噛み締めたりした。






 可愛くて生意気な、大事な生徒。



 今日からは、おれの恋人。




 初えっちにしてはいろいろ酷いことされたりしたけど、
 試験管入れられたり氷使われたり他人に見られそうになったり鏡で視姦されたり・・・・・・










 うぁ〜〜・・・思い出したらムカついてきた。
 ・・・やっぱこいつ、百回ぐれぇ蹴っとくか?




 振り向いて、目が合う。
 ゾロが、目を細めて幸せそうな顔をして。ゆっくりと、顔が近付く。




 ゾロの唇にキスしながら思った。





 今日は腰が痛ぇから、蹴るのは明日にすっかな。と。








  明日も、あさっても、その先も。
  ずっと一緒にいるんだから。









   
E N D







  長らくのお付き合いありがとうございました。


 
・・・オチとか・・・どこに・・・(笑)


 お読みいただいた皆様、応援くださった皆様、本当にありがとうございましたー!