「ゾロ・・・」
サンジは毛布の中で上体を捩り、腕をのばしてゾロの首に回す。
身体ごと寄せて首筋に鼻を埋めると、冷たさかくすぐったさからか、ゾロがびくりと小さく息を詰める。気にせずそのまま鎖骨のあたりに舌を這わせちゅうと吸いついた。
軽く吸っただけでは痕も残らないらしく、サンジは眉根を寄せてむぅと口をとがらせる。
もうちょい強めのほうがいいのか?口をあけてゾロの首筋に齧りつこうとしたら、歯を立てたところでこめかみを掴まれて押し退けられた。

「あゃっ?」
「なにしてんだおめェは」
「いたいいたいー!」
ろくに力も込められてないアイアンクローが痛いわけはなかったが、サンジがいやいやするように身をよじると、ゾロはすんなり手を離してくれる。
その隙に今度はゾロの口にむちゅーっとかぶりついた。
「んぐっ!?」

サンジのふいうちに驚いたゾロがガチンと身体を硬直させるのに、よっしゃざまぁみろ!と勝った気分でいられたのも一瞬だけ。
ちゅっちゅと軽く唇を触れあわせ、舌でぺろりと舐めたときにあっさりと形勢逆転されて。
ぬるりと口内に侵入してきたゾロの舌に、サンジは「はぅん」なんて聞くに堪えない情けない声をあげてしまう。

だって口ン中、むしょーにくすぐってえっつーか、やらかくてぬるぬるしててきもちいいっつーか。
れろれろ舌を絡ませ合ってると腹の奥がジンとして、力が抜けてくる。舌で舌を舐められるってなんかすげーエロいな。
「ん・・・んぁ・・えう・・」
目を閉じてゾロの分厚い舌を味わってるとだんだん頭の中がぼーっとして、背中を支えてくれているゾロの手に体重を預けた。反対の手でゆるり脇腹を撫でられてぴくんと身体が震える。
くすぐったいのも快感として捉えようとする自分のほうこそ、いつのまにかだいぶエロスイッチ入ってることに気付いたけど、もうそれすらどっちでもいい。この状況でエロくなんなとかぜってェ無理。
もっとキスしてたくて、サンジはゾロの口内に舌をねじ入れた。
じゅるぅと唾液ごと吸われれば、サンジの喉から漏れるのはくゅうと子猫が鳴いてるような声。
身をひねった拍子に掛けていた毛布がずり落ちたけれど、キスだけで熱くなって汗ばんだ身体は寒さもあまり感じない。

まだ息継ぎもうまくできないサンジが呼吸を荒くしていると、ゾロの舌が顎を辿り首筋へ。
「っは・・あは、く、くすぐってー・・っん・・」
おもわず笑いそうになるけど、構わず舐められてゾロの吐息が首筋に触れると、頭の中がぼやけて弛む。、無意識に顎を反らして、くすぐったさの中から快感をすくい取ろうとしてる。
「こうされんの好きか?」
喉もとでくぐもったゾロの声に、切れ切れにうんと頷いた。
「ゾロ・・・もっと、なんか喋って」
「・・・あぁ?そりゃどういう趣味だよ」
「だって・・んっ、こえ・・聞きたい・・」
耳の下らへんをちゅうと吸われて、
「やらしーこと言われてェって?」
「・・ん、そうかも」
だっておればっか変な声出してんの、恥ずかしいじゃねーか。
そう言うと、恥じらいの基準がわかんねーよと可笑しそうにゾロが笑った。



 ◆



「ここは?」
「んっ・・むずむずして・・なんかこそばいィ・・」
「慣れてくりゃ男も乳首感じるようになるらしいぞ」
「・・っそ、なの・・?」
「そう。だからもうちょっとガマンしな」
後ろから耳元に囁くゾロに、わかったと言おうとして、きゅうと強く抓まれた胸の先にびくんと身をすくめた。指で挟んでつまみあげ突起を指の腹でこねられると、こりっと血が集まりふくらんだそこが熱くてジンジンする。電気信号送られてるみたいに痺れが全身に伝わって、弄られるたび腰が浮いた。
「・・・あァ、慣らすまでもねェみてェだな」
既に充分感じてるのをからかわれて、カーッと赤くなる。背を丸めて俯いたら耳朶を舐られ中まで舌を入れられた。柔らかく濡れた音が頭の中に直接響くようで。肌が粟立って上向いた陰茎がぴくんぴくんと跳ねながら先走りの雫を腿まで滴らせる。
「んわあ、あっ、みみ、っきもち、ふあぁ・・」
痺れるみたいに目の前がぼうっとして・・・もっとしてほしくて、ゾロの方へ身体を預けたら、感じやすいなァお前、とゾロがふっと息を吐いて笑う。耳朶にかかり鼓膜を震わす吐息にすら感じた。


さっきまでの緊張とか逡巡とか、一体どこ行った?と自分で思わなくもないが、いざコトが始まってしまえばサンジの意識はゾロを感じて快感を追うことに占められてしまう。
未経験なことばかりでもっとまごつくかと思ってたけれど、ゾロが上手いのかサンジの身体が敏感なおかげかあるいはその両方か。停電の暗さのせいもあってほとんど見えない視界が、かえって触れられる感覚を鋭敏にしてくれていた。

「すげェ、もうヌルヌルじゃねェか」
「や、あァあっ・・んんーん、だっ・・て」
ぬちゅりと滑る先走りを潤滑剤にこすりあげられながら、カラダって正直だなーと思う。
自分でするときなんてこんな風になったことないのに今は、壊れた蛇口みたいに溢れだして止まらない。ゾロの手と舌と声だけで勃ちあがりきって蜜を垂らす陰茎を、いじわるに揶揄されてもそれすら気持ち良くて。
鼻の奥がぐずついて目が潤んでくらくらして心臓が高鳴りすぎて。
「・・こんなになんの・・へん・・?」
「いや、エロくてイイ」
「 そ!・・っか・・・じゃあ・・・ゾロのも、してやる」
サンジは体勢を入れ替え、座るゾロの腿をまたぐと、向かい合ったゾロの一物に手を伸ばした。
するりと指先で竿を撫でると、ゾロの喉が音を立てて鳴る、それがなんだか嬉しくてサンジは両の指を絡め―――

「・・・うおぉ!?でっか!」
影になってロウソクの灯りが届かず、見えないままの形状は感触で判断するしかないがそれでも。
(ゾロのちんこ、ヤベェこれちょっとおれの両手に余るんですがっていうか何だコレ!)
なんとなく自分サイズを想定してたものだから、予想外の大きさにサンジは驚きを隠せない。ちなみにプライドの為にいえばサンジのは至って成人男子の標準サイズ、ゾロのが太さ長さともに規格外なのだ。

(男同士のセックスってこれを尻にいれるんだよな?・・・あれ、おれ死ぬんじゃねぇ?)
動きの止まったサンジの腰をゾロが引き寄せ、ゾロとサンジふたりの性器をぴたりと合わせて
「・・痛ェことは今日はしねェから、心配すんな」
おめーは気持ち良くなってりゃいい。
ゾロはそう言うと腹の間で存在を主張するペニスを二本まとめてサンジの手に握らせた。
あやすように優しく囁かれても、コレが自分の中に挿ってくる想像をするだけで顔が引きつってしまう。

「・・や、やっぱいてぇ・・んだよ、な・・?」
「・・・・・・」
「いや無言やめろ?なんか言って?」
「・・・まァ、今ソッチは気にすんな集中しとけ」
「んんっ・・ふあ・・」
ぐちゅりと腰を揺らされると、途端に詰めていた息が抜ける。痛いコトしないってことは、挿入しないんだろうか、ってことに考えを巡らせて・・・気負っていた手前ほっとしたような、なんか残念なような。ゲンキンなものだがそれはそれで複雑。

「手ェ動かせるか?」
床に手を突いて上体を支えたゾロが、サンジの手に片手を添えて、二本一緒に扱きだした。とろとろと互いの先から漏れる透明な体液を塗りつけ、滑りをよくしながら。
サンジの両手とゾロの手、みっつがバラバラに動いて先端と根元と竿をあますところなく撫でていく。びりびり痺れるみたいで。戯れのように鈴口に指の腹をもぐりこまされサンジの息があがる。
「・・ぅく・・ぁ・・・っ、」
「・・ッ・・」
目の前でゾロが喉の奥で唸る、その音を聞くだけで疼きが増して。
「・・・も、やべ、ぞろ・・いきそ・・・」
鼻がつまってくるしくて、口を開きハァハァと息を荒げてサンジが扱く手を速めると、ゾロが「はえーよ」と笑うがその声も興奮で掠れてる。

「ワリィ、俺ァまだかかりそうなんだが・・もうちっと我慢できるか?」
「んんん・・! っむり・・」
汗の浮いた額をゾロの肩口に寄せ、手の動きに合わせ腰が揺れる。
だってもうサンジの性器はパンパンにふくらんで、あともうちょっとの刺激で爆発してしまいそうなんだから。がまんしなきゃと腹に力を込め目を閉じるとそのぶん、粘り気のある水音やこすれあう感触、ゾロの息遣いを敏感に感じてよけいに煽られた。きもちよさにジワリと目が潤む。

「はぁ・・あ・・やだむり・・ゾロもいこ?な?」
「・・・しゃーねェな。ちゃんと握ってろよ」
涙声で懇願したらゾロが身を起こし、サンジの尻を両手でつかんで揺すりだした。身体ごと持ちあげて落とされるたびぐちゅぐちゅ擦れる性器が掌の中で質量を増す。
「あ・・あぅ・・っゥん、はあっ・・」
自慰のようでセックスのようなその行為は、彼が宣言した通りサンジに快感だけを与えてくれていた。
ゾロのペースで揺さぶられながら、目の前に見えた絶頂の兆しを追おうとサンジも懸命に腰をくねらせる。尻たぶを強めに握られる少し痛いぐらいの刺激すら、精液を押しだす手助けをしてるだけ。ぬめる蜜も汗も手の中の熱も、溶けあってどっちのものだかもう分からない。

がくがく震えながら喉の奥から留まりきらない喘ぎを吐き、サンジは火照った頬をゾロのこめかみにあてて耳元で彼の名を呼ぶ。もう限界が近いことを伝えるために。
「ゾロ・・ぞろぉきもちいい、イ・・も・・いくっ・・」
舌足らずなサンジの喘ぎに呼応するようにゾロの怒張が跳ね、クッと息を詰める様子にまた煽られて。腹から下がぐずぐずにとろけそう。
「ン・・いってい?もぉいい?」
「あァ・・・俺も・・出る・・」
あぁゾロも・・・ゾロもきもちよかったんだ。ほっとしてサンジの口元が笑みに緩む。
「は・・あはッ・・っ、ぁ・・ァうんんッ!」
きつく閉じた瞼の裏に白い光が瞬いた気がして。
サンジは顎を上げ、痙攣しながら精を吐き出す。ほぼ同時にゾロも達し、互いの間に放たれた生温かい体液が胸のあたりまでを濡らした。



 ◆



暗い場所に慣れきった瞳孔が、急激な明転に順応しきれず目を眩ませる。
どうやら射精のあの瞬間に、停電が回復したらしい。
タイミングがいいのか悪いのか。ゾロは顔を顰めて天井を見上げた。


射精を終えたばかりで浅く息を吐くサンジを落ち着かせようと、ゾロは肩に顔を埋めたままのサンジの背を撫でる。くたりとゾロに凭れかかるサンジを抱き起そうとして―――初心者にこっから先は酷か…、まァ風呂でも入るか その前に後始末か、などと考えながら。
深呼吸を繰り返していたサンジが、ゾロの手が肩に掛かるとふるふると首を振って顔をあげるのを嫌がった。視界に入る耳たぶも首筋も背中も真っ赤に染めて。

「・・・あ?どうした、へばってんのか」
「・・・・・・・でんき」
「おお、電気ついたな?」
「・・・明るいの・・・・は・・・はずかし・・い・・」

きゅうと身を縮め抱きついてくるサンジに、ゾロが ぶはっと吹きだした。
「さっきまで腰振りまくってた奴の台詞とは思えねェな」
「ぐはぁ言うなあぁぁー」
お前の羞恥心の基準がわかんねーよと。


暗がりの中であれほど乱れてみせたくせに、明かりがついた途端この調子では先が思いやられる。
もっとも普段とのギャップもあり、どちらかといえば先程までの 快感に貪欲なサンジのほうが別人のようにも見えてしまう。あれはあれで、すげェ可愛かったが。
「まァ、そのうち慣れろよ。・・・とりあえず風呂入るか、汗が引くとすぐ冷えるぞ」
サンジの柔らかな髪を梳いてなだめつつ、
「一緒に入るか?」
からかい交じりに聞いてやる。さてどんな反応をするのかと興味を持った。
「入る」
目を輝かせたサンジに、間髪置かずあっさり承諾で返されてまた笑う。そこはいいのかよ。

しかし不思議なもので最近は――初めは確かにサンジに対して性欲しか持ち合わせていなかったゾロが――サンジのことを『可愛い』と思ったり、心臓のあたりが重くなったりする機会が増えた。

好きになってんだろうなァとは思う。 ゾロに『恋』の文字など似合わないと自分でも思ってはいるが。

でなければ、クリスマスを恋人同士で過ごすイベントなぞ、ゾロの脳裏には欠片も浮かばなかったはずだ。

―――たとえそのイベントに思い至ったのが昨日の夜で、食事の予約なんて気の利いたものを取ってなかったとしても。
クリスマスって何すりゃいいんだ、と同じマンションに住む幼馴染みに相談をもちかけ 『ゾロがようやく人並に行事に興味持った!』と喜びながら呆れ果てた友人のコーザに、レストランの予約を譲ってもらっただけだとしても。

そういえば、ついでに譲ってもらったクリスマス仕様のショートケーキがふたつ、昨日から冷蔵庫に仕舞ってある。
賞味期限など気にも留めないゾロは、風呂上がりにでも食うかとサンジに声をかけた。

「お前、甘いもんイケたよな?」
「・・・なんだよ急に。え、やらしい話?」
「どんなだ」
「・・・そーいうプレイじゃなくて?」
「普段なに見てんだおめェ」

やはりサンジの考えはゾロには突飛過ぎてよく分からない。
そうじゃなく、ケーキのことだよと言うと、あぁうんすきすき、とサンジが顔を綻ばせた。どうやらすっかり照れて隠れようとしていたのは忘れたらしい。呆れたものだ。

呆れた、と言いながらつられてゾロも笑みを浮かべてしまうあたり、この同僚に嵌まりつつある己を自覚している。
笑顔を見るだけで和むなんて、これまでの人生では考えられなかった現象だ。
どうしたものかと困惑するも、胸が甘痒くなるこの感覚は嫌いではない。エロいことに明け透けな割にどこか初心な恋人に振り回されんのも。

サンジの張り付いた前髪を梳かし、ぐるんと巻いた眉毛に口付ける。
「・・ん・・・ぞろ、好き」
嬉しそうにはにかんで呟くサンジに、心臓鷲掴みにされながら、ゾロはゆっくりとその唇にキスを落とした。


ちなみにあとで『甘いもん使ったプレイ』がどういうものか聞いてみると、「はちみつかけて舐める、とかかと・・・」とサンジがごにょごにょ照れて言うのが可愛かったので、今度やってやろうと思う。






窓の外ではいつのまにか雨が雪へと変わっている。
この地方では珍しい十二月の降雪に、
サンジが「ホワイトクリスマスだな」と幸せそうな笑顔でゾロを見あげるまでもうすこし。




END








ガチです!の二作目となりますー。クリスマス編、そして停電ネタ。
ところどころ前作読んでないと不明な部分があります…ので、text部屋の前作「ガチです!」も併せてお読みいただければと思いますー♪(宣伝?)
ここのゾロは、うちの小説史上もっともマトモな人ですよねー。 …えーと、すくなくとも私はそのつもりです(笑)
このふたりには、ちょっとずつ仲良くなってってほしいなぁvv

メリークリスマスゾロサン!!!

2014.3.3(更新日がオカシイ)





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