サウザンドサニー号に、今宵も響き渡る、声。


「あぁぁあああっ!!ゾ、ろぉっあああう、あ、ぐ、ぅ〜」

嬌声、というよりむしろ、悲鳴。

新しい船の、格納庫で。

そこそこ防音も聞いているはずのその部屋で、獣のように苦しげに呻いて泣いている男。

その声の主は、この船のコックであるサンジだ。


(い。いだい・・・・痛い・・・・・死ぬ・・・も、むりだ、しぬ・・・)

荒く息を吐き、必死の思いで痛みを我慢する。

「サンジ、サンジ・・・」

その上に、同じく息を荒げて圧し掛かっているのは、ロロノア・ゾロ。
現在一億二千万ベリーの賞金首。
世界一の大剣豪を目指す、緑髪に腹巻の、三刀流の剣士。






ゾロとサンジ。
二人は、蜜月まっただ中の恋人同士だ。

お互い初めて出会った瞬間に一目惚れ。
素直になれない天邪鬼なコックと、色恋に滅法疎い剣士が、遠回りしてすれ違って、やっとのことでお互いの気持ちを確かめ合えたのは、メリー号のキッチンでだった。

その後もタイミングが悪かったり邪魔が入ったりなんだかんだあって、初めて体を結んだのは、ロビンの一件が全て終わった後の、ウォーターセブン。

長いあいだ思い続けてやっとゾロとひとつになれたときのサンジの感想は、

『クソ痛ェえぇええええええええっっっ!!!』

だった。








「あう、ぐぅ・・ん・・・ゾ、ぉア、ん」

「ん?気持ちいいか、サンジ・・」

「う。・・・ン、キモチい、ふっ・・ぁぐ。」

サンジの喘ぎにゾロが嬉しそうな顔をする。
にかっと笑って、ほんとに嬉しそうな顔をして激しく腰を揺する。

そのたびに、内臓を内側から鈍器で殴られるような激痛が走る。

『気持ちいい』なんて、嘘もいいところだ。

それどころか、痛みしか感じない。

ゾロとセックスをするようになってからさほど日は経っていないが、こんなものが気持ちいいなんて思えるわけがない。

それでも、大好きなゾロに、
こんなに嬉しそうに自分を抱くゾロに

『すいませんこれっぽっちも気持ちよくないです』 なんて言えるはずもなく。

もし自分がそんなことを言われた日には、男としてのプライドずたぼろだ。
ちょっとしばらく立ち直れなくなるかもしれない。

なので、

痛みに顰めた顔を見られないよう、喘ぎに苦渋を混じらせないよう、
真っ暗にした格納庫で、ゾロに抱きついて肩に顔を埋めながら、息を詰める。

痛みで腹部に力がこもり、中に入ったゾロのものを締め付けるのを、
「あんま締めんなよ、エロコック・・」
とゾロがそれはもう嬉しそうに言う。

(あ〜〜コイツいっぺん蹴ったろか・・・)

とか朦朧とした意識で思いながら。

サンジはそれなりに幸せだった。















「どうだ、できたか?」

ど派手な水色の髪のほぼ半裸男が、船医室で、その部屋の主に話しかける。

「うん、これで完成だと思うけど・・・・・・ほんとに大丈夫かな。副作用とか・・・・・臨床データもまだとれてないのに・・・」

それに答え、不安げな声を出す、サウザンドサニー号のトナカイ名船医。

「なぁに、おめェの医学で出来ねェもんなんかないだろ。じゃぁ早速飲ませてこい」

無責任に背中を押す年上の新入りに

「そ、そんな褒められても嬉しくねぇぞ〜〜♪」とくねくねしつつ。

チョッパーは、少々気が咎めながらも、甲板へと向かった。






 
Endless Dreamer









 サウザンドサニー号の芝生甲板。
 
「ゾロ〜・・・・こここここれな、あ、新しく作ったドリンクだ。」

ピンクの帽子をかぶったモコモコの船医がどもりながら差し出す、この世のものとは思えない珍妙な、どす紫色の液体。

鍛錬中だった剣士 ロロノア・ゾロは、あからさまに顰め面をしながら

「なんだこれ」と尋ねた。

もしこれが『3時のおやつ』ならば
ここへと運んでくるのは、凶暴で足癖の悪い、可愛い金髪コックのはずだ。

「こ、これ飲むと体にいいから、のの飲んで」
「・・・あ?」
「ほほほんとだぞっ。うそじゃないぞっ。」
そう言うチョッパーが、見ていて気の毒になるくらい慌てていたので、ゾロは訝しみながらも
渋々そのドリンクを受け取った。

「あぁ、ありがとなチョッパー」

「お、おう・・・」

礼を言うと、チョッパーはビクリと震え、ゾロがその飲み物を飲み干すところを凝視する。

(ごめんなゾロ。・・・みんなのためなんだ。)


「―――――――――ぅわ まずっっっ!!!なんだこれっっ!!」
「わ!吐き出しちゃダメだぞ!!」
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
ゾロが残さず飲んだことを確認するとグラスを受け取り、モコモコ船医は罪悪感に苛まれつつ、そのまま船医室のほうへと駆けて行った。

あとには、この世のものとは思えない味の飲料を飲んで悶絶する剣士だけが残された。


************     **************


同時刻、ところ変わってキッチンでは




「ねぇサンジ君、最近なんか疲れてない?」
珍しく、ふたりだけでのティータイム。ナミが心配そうにサンジに話しかける。
「えっ。や、大丈夫ですよナミさんっw心配してくれるの?嬉しいな〜」
サンジが、体をくねらせてメロリンしながらナミに答える。
それをうざったそうにあしらって「大丈夫ならいいんだけど・・・」というナミに、
心配かけて申し訳ない気持ちもありながら、サンジは内心ほっとした。

と、同時に、心の中だけで盛大に舌打ちする。

サンジが疲れている、というナミの懸念は当たりだ。

それというのも

(あのクソマリモ腹巻アホ迷子剣士が。)

毎晩 毎晩 毎晩毎晩。

もう無理ごめんほんと無理だから勘弁してくださいっつーかそんなデカブツ毎日遠慮なくガンガン突っ込まれるこっちの身にもなってください。と言いたくなるほどサンジを求めてくるからだ。


毎夜の如く、痛みと疲労に耐える日々。

いくらサンジが痛みには慣れていて体力には自信があるといっても、
痛いものは痛いし、疲れるものは疲れる。

それに耐えられる理由はただひとつ。

(愛だろ、やっぱ。)

ナミに心配かけようが、この関係だけは失くすわけにはいかない、と考えたところで、
(うわぁぁぁ『愛』だって!!マリモに愛だっておれ!!きもっちわりーーーー)
サンジは気恥ずかしさと薄ら寒さに鳥肌を立てる。

そんなサンジを、ナミは呆れ顔で眺めた。



そして、思いもよらぬ問題発生。
その日の夜の、格納庫にて。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





「ン・・・ふ・・んぁ」

ゾロとちゅうをするのは好きだ。

すごくすごく気持ちがいい。

キスが感じるのは、相手のことを愛しているからだ、とどこかで聞いた事がある。

キスの相性がいいと、体の相性もいい。とも。

後者は甚だ疑問だが、前者は、ゾロと付き合うようになって理解できた。

口の中に舌突っ込まれて弄られて唾液とか飲まされるなんて、好きなやつじゃなきゃ我慢できねぇもんな。

セックスよりも、キスのほうがよっぽどいやらしい。

そう思うのは、サンジがまだゾロとのセックスで、快感を得たことがないせいか。







ゾロのセックスは、言ってみれば無骨で稚拙。
いつも甘い雰囲気になるわりに、キスしたあとは、ちょこっと濡らしてほぐして、
突っ込んで動いて、出して、終わり。

しかもゾロのチンコは、なんか尋常じゃないほどにでかい。
ちょっとそこらじゃお目にかかれないほどでかい。
いつ見ても全開勃起だし。
それがまた規格外にでかい。
初心者にそれは厳しすぎるだろってほどでかい。そんでグロイ。
そんなものをむやみやたらに挿入されて、気持ちいいわけがなかった。体ぶっ壊れないのが不思議なほどだ。

しかしサンジもゾロ以外との経験がこれっぽちもなく。それはもう男どころか、麗しいレディとすらそんなことになった経験がなく。正真正銘、まっさらぴんな体であって。・・・それも、ゾロに抱かれるまでの話だが。
なんで気持ち良くないのかが、よく分からないせいもあり。
男同士のセックスは、痛いだけだと、こんなもんなんだと諦めていた。







なのに、今日のゾロはなにかおかしい。



「ん・・・んぅぅ、ぁ、ろ・・・」

なんか・・・・・ちゅう、しつけェ・・・っ。

さっきから、ずーっとちゅうちゅうべろべろやられていて、サンジはだんだん息苦しくなってきた。

そのうえ、きつく抱き締められて舌を吸われ、口の中余すとこなく舐められて。
酸欠と気持ちよさに頭がぼおっとする。
「ふ、ぅんっ、ろ・・ぞろ・・・」
格納庫の床に押し倒されて口付けられながら、サンジはゾロの背中に腕を回してしがみついた。

(あぁ、ゾロ、好きだ・・・)

こうしてるときが、一番幸せだ。
おめぇがデカチンなのにセックス下手でも もうどうでも・・・・・・


「・・・悪ィ・・・・・・今日はやめとくか・・・」

だから、うっとり幸せに浸っていたサンジが、唇を離して呟かれたゾロの台詞を理解するのに時間がかかった。

あれよという間に抱き起こされて、軽く口付けられ、

「・・・は、 エッ ? え、 な・・・」

回らぬ頭で 何で!? と聞こうとしたとき、ようやく気が付いた。
くっついたゾロの下半身が、全く反応していないことに。


「・・・・・・ぇ・・・」

「悪い・・・調子でねぇみてぇだ・・・」

がん、と頭の奥に痛みが走る。
その瞬間感じたものは、
絶望以外の何者でもない。
さっきまで、あれほど幸せを感じていたのに。
毎晩毎晩がっちがちに完勃ちだったゾロのチンコが萎えている。
それだけで、涙が出そうになった。
(ゾロ、もしかしてもうおれに、飽き・・・・・っ・・)
それ以上は考えたくなくて、息を殺して俯いた。
ぱたぱたっと、滲み出た涙がサンジの膝を濡らす。

ゾロが、慌てたようにサンジを掻き抱いた。

「お、おいっ、どうした?どっか痛ぇか」

いてぇよ、バカ。

おめぇの言動ひとつで、こんなにも胸がいてぇ。

ネガティブ思考に陥っているのは自分でも分かったが、この痛みだけはどうしようもない。

「ゾロ・・・・もうしねぇのか?」

「・・・・・いや、するぞ」

意を決したように囁かれ、ばっとゾロを振り仰ぐ。
目の前に、赤い顔をした、恋人。

「すげェしてぇんだ。・・・なぁ・・・おめぇがいいなら・・・コレ、触ってくれねぇか」

腕をとられ導かれた先に、ゾロの股間がある。


触る、ってコレをか。おれがか。

・・・触るだけでいいのか?


ゾロに、何かをしてくれと強請られたのは初めてだった。
サンジは、そのまま両手でそこを掴み、大きく息を吐く。

男を恋人に持ったとしても、もとは自称ラブコック。
かといって、他人の体に触れた経験はゾロ以外にないが、

「・・・いいぜ、おれが気持ちよくしてやるよ・・ダーリン?」

サンジはそこを一度擦ると、ゾロに見せ付けるようにネクタイを引き抜いた。









 どうしよう。ものすごくドキドキする。

(なんかこれって・・・いざとなるとずげぇ恥ずかしいんでない?)

胡坐をかいたゾロのズボンをずり下げ、取り出した性器。


いつも、勃起したところしか見たことがなかったが、
今日のゾロのチンコはくたんとしている。
くたんとしてるのに、おっきくなったときのサンジぐらいのでかさがある。
でもくたんへにゃんとしてる。
それがなんだか悔しくて、
サンジは両手で掴んだ。


男の体のイイトコロは知っている。
要は、自分で弄ってて気持ちいいところを攻めればいいのだ。
 他人のイチモツを触ったのは初めてだったが。


こく、とサンジの喉が鳴った。



意を決して揉んでみる。

ふにふに。

やーらかい。

てのひらの上に乗っけてみた。

へたん。

てのりちんこ。

もう片方の手で撫でてみた。

よしよし、いーこいーこ。


なんか・・・・おもしれーかも・・・

ふにふに。もにゅもにゅ。


・・・ぶあははは!かわいいっ!!


思わずふきだしそうになって、慌てて口を結んだ。そのおかげで腹筋がひくひくする。


(うぉお。 やばかった、ゾロのちんこ触りながら爆笑するとこだった・・・)

再起不能だ。
もし、例えば、美しいレディに、この状況で自分のチンコ見られて爆笑されたら・・・・・・。
考えただけでサンジまで萎えそうになる。

「・・・おい。無理すんなよ」
「む、無理なんかしてね、ぇよ・・」
うつむいてふるふるしてたサンジを、どう思ったのかゾロが声を掛けてきて焦って声が震えた。


気を取り直して。

んー。これをどうするべきか。
がっちがちになっててくれたら、まだ触りようもあるんだが、

・・・おもっきり、ダレてるもんなぁ。


両手で掴んだ陰茎をさすってみた。相変わらず反応は全くない。
なんで勃起しねぇのかとか考えるのは、とりあえずやめた。また、泣いてしまいそうだったから。
普段は図太い自信があるが、いざこいつに関わることになると、おれの涙腺はおかしくていけねぇ。
気持ちのセーブがきかねぇ。
ゾロの言葉ひとつ態度ひとつで、このうえなく幸せな気分になれるし、泣きそうになったり悲しくなったりもしてしまう。
どうしても、すげぇ、すげぇ好きなんだ、ゾロのことが。
だからかもしれない。

ゆっくりと、ゾロの股間に顔をうずめ。
舌を出して、へにゃチンを口内に迎え入れる。
「おい・・・こらっ!」
勃起チンコでさえ口に含んだことないのに、いきなりフェラしだしたサンジに、ゾロが焦ったような声を出して押しのけようとするが、ジロリと睨みあげて首を振った。
唇で味わう柔らかい初めての食感に、すこし驚いた。
ちんこ食うのってこんなカンジなんだぁ、と感心しても、嫌悪感なんてちっとも湧かない。
「・・・んなことまでしなくていい・・・」
絞り出すような声でゾロが言うのに、サンジは口を離して見上げた。
「・・・気持ち・・よく、ねぇか?」
「いや、気持ちはいいしありがてぇんだが・・・。おまえが・・・」
「いーんなら・・黙ってヤらせろやこんクソボケが」
低い声で、精一杯かわいくお願いすると、再びゾロの性器にむしゃぶりついた。





(感覚は、ちゃんとあるみてぇなんだけどなぁ・・・)
むせ返るように強い匂いを発するそれを、口に入るだけ含んで、舌での愛撫を繰り返す。
弱いだろうと思われる、カリのまわりや裏筋や、亀頭の割れ目に舌を這わせ突っ込んでも、
ゾロのちんこはまだ無反応。
でもそのたびに、腹の筋肉はぴくぴくいってる。

きっと気持ちいいんだろうと勝手に思って、唾液でベトベトになった陰茎を揉みしだきながら、その下の嚢に吸い付いた。

「・っ!」

ヒュッとゾロが息を飲む気配、に 少し驚く。

あ、そういやぁ、ココ、自分でもあんま触ったことねぇな・・・金玉吸われるって、どんなカンジなんだろ。

ふと思って、もぞりと片手を己のズボンに潜り込ませてみて、ぬるりと触れた感触に驚愕した。

「―――――!!!!!」

なんだ これっ!!??

今の今まで全く気付かなかったのもおかしな話だが。いや、ゾロチンしゃぶるのに必死だったせいもあるが。

サンジのチンコはもう完全に勃っていた。

しかも、先からだらだらと汁を垂らして、パンツの中が今ちょっとトンデモナイことになっている。

(わあぁぁぁなんかヤベェもん触ったーーーー!!!!)

急いで手を引き抜こうとして、思わずヌルッと撫でるかたちになった性器から、また先走りが漏れる。

「ウァンっ!」と声をあげたサンジを、


ゾロが、面白いものをみつけた顔で見下ろした。






「―――――おい、自分で弄ってねぇで、俺にも触らせろ」

あれ?っと言う間に床にころんと寝転がらされたサンジは、きょとんとゾロを見つめた。
鼻息荒く、ゾロがサンジの服を剥ぎ取りにかかる。

「や、!え、わ、わうあわ!!」
意味のない叫びを上げるも現状に追いつかない頭ではさして抵抗できるわけもなく、
すぐにすっ裸にされてしまい、ぱかーっと股を開かされた。

「や、だ!見るなバカっ!」
「すげぇ、どろどろ・・・」
先からしたたる液体をついと指でぬぐい、ゾロが嬉しそうに溜め息を漏らす。
その瞬間、サンジの体がビクリと跳ねた。

「うひぃ、っあぁ・あ」

いま、なんかびりってした・・!!

「どこ触ってたんだ?ここか?」
こねるように先走りを塗りつけられて、また背筋が浮く。
「ちが、や、ひぁあァン!」
「気持ちいいのか」


気持ち、いい。いつもより、ぜんぜん、気持ちいい。
閉じたまぶたの裏がじんじんする。
触れられてるところから、体じゅう、痺れたように。


「た、・・・っ」

「・・ん?」

「玉 触んのっ、ぁ く、っどんなだろッて、思っ・・・っン・」

途切れた息をつきながらも、素直に口にするサンジを、ゾロが くはっと笑って見下ろす。

唇の端をゆるく持ち上げ、狙いを定めたケモノのような表情で。

瞬間、ゾロの纏う空気が変わる。


その・・っ、その顔はやめろ!
いかにも『イイコト思いつきました』みたいな!
でもぜってぇロクなことじゃねぇんだよおめぇの思いつくことはなぁ!!
っつか、その顔が、一番好きだとか思っちまうおれもどうなの・・・

「シてほしいなら、素直にそう言やいいのによ」
ゾロは言い捨てると、ふたたび身をかがめ、
さっきまでサンジがしていたように、サンジの性器をその口内に含んだ。
「ふぁぁぁ・・・っ」
( くち、 はじめてっ・・!)
初めて味わう、熱い口腔の温度に、ぬるついた舌の感触に、サンジの体は面白いほどのけぞった。
カリのでっぱった部分や、亀頭の先を、唾液をたっぷり塗りつけられながら、舌先でねぶられ。
戯れに歯を立てられる。
ビクンビクンと反射で腰が揺れるのそこに、サンジの股の間でゾロが可笑しそうに息を吹きかける。
「やぁぁ、ああん、あ、ヤ、あ」

「・・・今日は、おめぇが嫌がっても、やめねぇからな。」

性器を愛撫されたまま、唸るように低く聞こえた声を、理解するより先に、陰嚢をぱくりと食まれる。
口内で、舐められ舌先でころころと玉を転がされて、初めて感じるくすぐったさに似た刺激にまた声をあげた。




(息、できね・・・っ)
今まで慣れなかった体には、過ぎた快感。
レディ至上主義を自負してはいたが、性欲をもって女性に触れたことなどないし、誰かに触られたこともない。
生涯唯一の恋人は、男で。寝ぐされまくった剣士で。
昨日までのセックスは痛いだけのもので、
愛撫が必要最低限どころか、充分なほぐしさえも与えてくれぬまま突っ込むだけだった。のに。

今日に限って こんなにされたら

「ゾロ・・っゾロ、ねが・・・・も、いれて、そ、こ なんか いれて・・ェっ!」
「指、入れてんだろうが」
サンジの吐き出した精液をたっぷり塗りつけた太い指を、根元まで三本。
くちゅんくちゅんと濡れた音をさせながら、突き上げるように中で捏ねられ、
半狂乱で泣きわめきながら強請る。
不機嫌そうな声で告げられるもゾロの息も荒くなっていた。

言っちゃ駄目だと分かっていたのに。
ゾロのそこが、勃たないうちは、口に出すもんかと、思ってたのに。
我慢できない。

指じゃ、もう足りない。

もっと、もっとおくまで、

ゾロの、

「ゾロぉ〜もうだめ、ダメ、へんっ」

おっきいのを、いれてほしくてたまらない。

涙と唾液でぐちゃぐちゃになった真っ赤な顔で振り返ると、
これでもか、ってほど、怖い顔をしたゾロと目が合う。
鈎状に曲げた指で、探り当てられたしこりをぐりぃ、と引っ掻かれ、
「ひぃぁ、アァ ァァァあああああああ」

びゅくびゅくと、サンジが今日何度目かの放出を迎えるとともに、

ゾロの、下半身に回らなかった血が、鼻から、ブバーーーっと大量に出た。
















そよそよと、心地のいい風が頬を撫でる。

真っ昼間から穏やかに惰眠を貪っていた緑髪の剣士は、
鼻腔をくすぐるいい匂いにぱちりと覚醒した。

芝生の甲板では、この船のコックが、足取りも軽やかにナミとロビンに給仕しているらしい。
パラソルの下から楽しそうな声が聞こえる。
コックはここのところ、至極機嫌がいい。昼も、それから夜も。


あの、ゾロのイチモツが反応しなくなったり、大量の鼻血にまみれてそれでも弄くり続けたり 
な、例の一悶着以来。
コックは機嫌がいいと、昼間ですら、だれも見ていないところで自らゾロに擦り寄って甘えてくるので、
ゾロもならって上機嫌だ。
仲間としても、恋人としても。これ以上ないほどうまくいっている。
もちろん、夜も。

あの日のコックは、壮絶にエロかった。

今までは、コックにイヤだと言われればすぐに手を離したし、やめろと言われたことは二度としなかった。
あいつの嫌がることはしたくない、という、らしくないゾロの、思いやりからだったが、
どうやら、そこまでしなくてもいいらしいことが、あの夜分かった。
イヤだイヤだと言われても続けていれば、コックはすぐに甘い声を上げて啼く。
コックが嫌がることほど、その後の乱れ方が半端ないことに気付いてからは。
手加減も遠慮もしなくなった。
そしてあの日、以来、
コックは今まで以上に、艶やかで、美しい。


ゾロは、自然、綻びそうになる口元を意識して結び、


今日のおやつは何か、と腰を上げようとしたところで、

近くにいるクルーに気が付いた。








「おめーのせいじゃねえって。あいつらがファンキーすぎたんだ・・・」

「ごめんな、フランキー、ごめんなあああ・・・」

肩を寄せ合いお〜いおいと噎び泣く、サイボーグとトナカイ。

そこに、何かを持ってやってくる長鼻。

「おぅい、やっとできたぞ〜〜、待たせたな」

ウソップの言葉に、フランキーとチョッパーは揃って、ぱぁあああっと明るい顔になった。
「よ、よがっだーーおで、寝不足で死ぬかどおもっだーーー」
「ウソップーーーでめぇやっぱいいやつだなぁオイ!」

涙と鼻水をだばだば垂らしながら縋りつかれたウソップは、うわぁきったねぇなぁ!とか言いながら、手の中の小さな器具を、二人に差し出す。

「ウソップ特製〜〜〜『なぁんも聞こえない耳栓』!これさえありゃぁ、大砲真横でぶっ放されてもきづかねぇってしろもんだ!」

ものすごくアホっぽいネーミングとキャッチコピーに、しかし受け取った二人は、うんうんと嬉しそうに頷く。
「あでぃがとーーうそっぷううう」

「それにしても、耳のいいやつらは大変だなぁ。俺やルフィなんかは、なんも聞こえねぇけどな」

同情するようなウソップの台詞に、ぶえええええんと、チョッパーとフランキーが揃って号泣した。




夜毎響き渡る、嗚咽にも似た男の嬌声に、安眠妨害もはなはだしいと
『イン○になる薬』、なるものをフランキーがチョッパーに作らせ、
元凶の剣士に飲ませはしたが。

うまくいくどころか余計にでかくなったコックの声に。


あいつらには関わるもんじゃねえ!!

と二人が決心を固めたことなど知らないゾロは、

「へぇ。大変だな」
と、呟くと
鼻歌でも歌いそうな勢いで、甲板へと歩いていった。




船は今日も
こともなく、太平なり。