雨が、体を伝う。


誰もいない夜の公園で


塾帰りに、雨宿りに駆け込んだ遊具の中に


ソイツがいた。




雨と泪 1




夜目にも判る、金色に光る毛を震わせながら、


縋るような大きな蒼い瞳で見つめてくる。


俺は小さくて軽いそいつを抱き上げると


自分のシャツを脱いでくるんだ。



(つめてぇ・・・)


雨に濡れたシャツでは暖がとれないのか


寒さに震えるそれを両手でさする


ちょっとでも温もるように


だんだん体温が戻ってきて、ほっと息を吐いた。




「おまえ、捨てられたのか?野良か?」


俺の問いに、ソイツはただ、ニー・・とか細く鳴くだけ。


「うちに、くるか?」


そう言ったが、そいつが鳴いても、


了承したかどうかはわからない。


勝手に、いいだろうと決めて、


とりあえず雨がやむのを待った。
















「おい、起きろチビ」


声がして目を開くと


そこに、見知った男の姿。


「こんなとこで寝てんじゃねぇ。心配すっだろーが!」


ちょっと低い声で怒られて


俺は首をすくめる。



「わるい。でもコイツが」


腹に抱えていた金色のそいつを


目の前に差し出すと


男がぐるんと巻いた眉をあげた。



「捨て猫か?野良??」


俺とおんなじことをいいやがる。


「飼ってもいいか?」


「おれに聞くなよ。親父さんに聞け」


「いいって言うか?」


「さぁな・・・」




もし、ダメだといわれたら。


こいつは、どうなるんだろう。


こんなに小さくて


いまにも壊れそうなのに。


「こいつだけは、飼ってもいいって言わせてみせる」



俺は不覚にも、ちょっと泣きそうになって


目の前にしゃがんだ男を見る。


男は顔をへにょっと歪めて、笑った。



「あぁ〜あ。情がうつっちまったか?


しゃーねぇ、おれも一緒に頼んでやるよ」


「ほんとか?」


「あぁ。もしそんでダメなら、おれが面倒見てやる。

な、だから帰ろうぜ、ゾロ」


情がうつったってなら、そうなんだろう。


一目見て、目が離せなくなるくらいには。






「名前、きめなきゃなぁ」


そういって笑う、気が早い男に


「もう決めてある」と言った。


でも、教えねぇ とも。



「教えてくんねぇと、呼べねぇだろ」


「好きに呼べばいいだろ」


「ほんっと、かわいくないクソガキ」


「ほっとけ」




そのとき、腕の中の猫が、ニャーっと大きく鳴いた。


二人で顔を合わせて笑った。









コイツは、あんたに似てるんだよ。



サンジ・・・








気付けば、雨はあがっていた


























ゾロ →小学6年生

サンジ→高校1年生

家が隣の幼馴染


猫の名前   『チビナス』(笑)




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